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5 神様
グループディスカッションが終わった。これまで一週間彼らを見てきた試験官は和気藹々としたグループディスカッションを見て何か感慨深い表情をしている。
「これまでの一週間、時間も分からない、娯楽も何もない、外部の情報も完全にシャットアウトと言う不便な隔離生活で大変苦労をかけたと思います。皆様、大変お疲れ様でした」
全員はいえいえと言った感じにペコリと礼をする。それは「気にしなくても結構ですよ」と無言のメッセージを送っているようであった。
「さて、この中で神様を決めるわけですが……」
全員は息を呑んだ。この中の誰が一体神様になるのだろうか、自分に決まっていると自信満々のもの、宇宙酔いに慣れることなく諦めるもの、始めの筆記試験も神様のことが分からずに白紙で提出した上にこの一週間でも皆の足を引っ張るようなことをしてきために諦めるもの、様々であった。
「全員、神様と言うことになります。おめでとうございます」
どういうことなのだろうか。皆は合格の喜びよりも試験官の言葉の意味が分からない。ウィリアムが挙手をして質問を始めた。
「あの、合格って……」
「はい、その通りです。皆様全員が神様と言うことになります」
「ここにいる九人全員が神様と言うことですか」
「そうでもありますし、違うとも言えます」
「言っている意味が分からねぇぞ!」と、ディオは試験官に怒鳴る。
「ここで皆様が神様になったと言う旨を説明しても、よくわからないでしょう。神様がお会いになります」
皆は試験官に連れられ「地獄の門」を模した門の前に案内される。部屋間の移動でこの前を通ることはあったが、芸術品が美術館のように点在するこの神殿故に深く考えるものは九人の中にはいないのであった。
門が重い音を立てながら開いていく。
門の中から光が溢れてくる……
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