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「トロイヤ戦争……」
「そうです、ゼウスは祖母ガイアの『人が大地の上に乗りすぎて重い』と言う声を受けて人を減らす手段を考えました。その結果が三女神を焚き付けた上でのパリスの審判です。その結果トロイヤ戦争が引き起こされ、十年もの長きに続いた戦争は多くの人の生命を奪うに至りました」
「神話の話じゃないか」
「私はそれが出来るのです。例えば、どこかの首席宰相を殺し、その犯人を対立国に仕立て上げるだけでも十分に戦争の火種になります。何もなければ偽りの領空侵犯をレーダーに表示させるだけでも十分です。起こしてしまえば後は人が勝手に殺してくれます、人と言うのは真偽も確かめずにすぐに行動を起こしますからね。たやすいものです」
「ちょっと待て、俺が戦ってた宗教戦争も……」
「私が引き起こしました。この戦争、元々は宗教指導者が車の爆発で亡くなったことがきっかけです。この後すぐに対立してる側の宗教が爆破の声明を発表、でも、その発表は私が出したものです。対立している側の宗教も出した覚えの無い声明が出されて驚いたでしょう、しかし、もう後には引けません。流れのままに未だに続く戦争の始まりとなったのです」
「俺の親友が両手両足ふっとばされたのは……」
「遠因としては原因は私と言うことになりますね。戦争ともなればつきものです。あなたの親友に関しては気の毒とは思いますが、人間を減らし不幸を減らすための一貫なのです。気にするのはおやめなさい」
ウィリアムは怒りに任せ『神様』の声が聞こえるディスプレイを殴ろうとした。しかし、セルゲイがそれを止める。アスクはそれに構わずにディスプレイの前に立ち尋ねた。
「世界中の疫病も……」
「私の仕業です。戦争と同等かそれ以上に人間を減らす効果がありますからね」
「AIで疫病を作るなんて話は聞いたことが無いぞ」
「世界中には細菌研究所がいくらでもあります。それこそ規模のある病院なら抱えてるものです。そこで照明を切るなりして、シャーレの一つでも落とさせ、そのまま空気感染を促したり、人間を運送者にするだけでも、簡単に世界的大流行を起こすことも可能です」
アスクは奥歯を噛み締め怒りを露わにした。そして怒気を強めた口調で『神様』に尋ねる。
「なら! 三十五年前に東欧で起こった流行り病! それは!」
「ええ、私が東欧のある国の細菌研究所の保管庫の冷却の電源を切った結果増殖した結果です。僅かな隙間からでも空気感染するぐらいの強力なものですからね」
「そのせいで、私の母は……」
「そのおかげで東欧の人口は減りました。人間を減らし不幸を減らすための犠牲と思って諦めなさい」
「き、貴様……」
「おい『神様』こいつに謝れよ」と、ディオが声を荒げて言う。
「私は『神様』として、やるべきことをしているだけです。謝る必要はありません。それに私が学んだ古今東西の『神様』が人間に謝ったと言う記録はありません」
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