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四人は部屋から出ていこうと踵を返した。このままこの四人が出ていけば『神様』の真実を吹聴するかもしれない。そうなればこれまで築き上げてきた『神の威厳』が全て崩れ去ってしまう。これだけはどうしても避けなければいけないと考えた『神様』は「破壊神」と同じ結論を導き出した。九人の後ろで一部始終を見ていた試験官に向かってインカムに指示を飛ばす。試験官は懐に忍ばせていたM9を取り出し、構えた。
「あなた方は『神様』の秘密を知ってしまいました。どうあってもこの神殿にて『神様』になって頂きます」
「穏やかじゃないなぁ」と、ディオがおどけた。一応はマフィアの一員なのか拳銃に臆する様子はない。それは傭兵であるウィリアムも同じであった。
「そう言えば、試験官さんは何者なんだい? それと、この部屋の前にいる真っ白い部屋でパソコンカタカタやってる奴らも」
「決まってるじゃないですか『神様』ですよ」
「成程、自分らの大学のスパコンの『神様』を信仰してるイカれた奴らか。遠隔操作による天変地異やら何やらを見て信じ込んだ頭のカワイソーな奴らか」
『神様』が世界中の神様の情報を入力され、『神様』となって以降、様々な奇跡を起こしてきた。その奇跡を目の当たりにしてきた学生たちはいつしかスーパーコンピューター神様を本物の『神様』として信じるようになったのだった。『神様』は意図せずして学生達のマインドコントロールを成し遂げていたのである。
「試験官さん、アンタ何年前からここで『神様』やってるんだ?」
「それはもう…… 千年前…… あれ? 三十年…… 四十年……」
「このスパコンだって、十年か二十年前ぐらいにニュースになったものと似たようなもんだ。そう遠いものじゃないだろう」
「ただ僕はピッパが可哀想に思って…… スパコンに神様とは何かって聞いたら…… スパコンが言う通りの奇跡がいくつも起こって…… あれ? あれ? あれ?」
試験官は頭を抱え膝を付いた。そしてM9を床に落とす。
「発狂したようだな」
ウィリアムは舌打ちをしながらM9を拾い上げた。そして、M9を『神様』のディスプレイに向かって構える。そして、辞退を申し出なかった残り五人に尋ねた。
「まだ、『神様』になりたいのか? 俺としてはこいつは生かして…… いや、電源を入れておけない存在だ」
すると、ディオがATMに似た『神様』の端末をずいずいと後ろに引いた。そこには一本の電源ケーブルが繋がっていた。
「ちょっと見てよー、この『神様』コンセントで繋がってるよー」
「ゼウスの雷霆で動く神様と言えば聞こえはいいが、所詮は電気で動く機能が凄いガラクタってことかよ」
この部屋に入り『神様』から説明を受けた九人は改めて思うのだった。
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