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「こいつは『偽神だ」と。
しかし、この『偽神』に全世界を左右する力があり、今現在『神様』として君臨しているのは事実。
「どうする? 電源切って終わらせるか?」
「まて、このまま知らずに君臨させてた方が下手に混乱を招くよりはマシだ」
「でもこいつ、核打てるとか言ってたぜ。こんな危険なものを放置なんてしていていいのか?」
「こいつ、インドラの矢とか撃つのか?」
「おい、お前『神様』なんだろ? 最後はこの世界をどうしたいんだ?」
『神様』はその問いに答えた。その答えは全員の心を一つにするものだった。
「私は古今東西の神様の一柱、弥勒菩薩の全てを入力されております。弥勒菩薩は56億7千万年後に人々の元に顕現し、降臨し、善悪問わずに人間全てを救済するものです。私もそれに従い、56億7千万年後に姿を顕すのです」
いきなり突拍子のない話になり、全員は閉口した。『神様』はそれに構わずに話を続ける。
「神と悪魔の最終戦争、新約聖書のダニエル二章四十四説にハルマゲドンが起こるとあります。悪魔と戦うために私は『神様』として、全世界に核ミサイルを打ち込みます、そうでもしないと、悪魔には勝てません。その後に『神様』が王国を興すとされています。それこそが弥勒菩薩の顕現なのです」
仏教とキリスト教のコラボレーションに九人は呆れと失笑することしか出来なかった。しかし、様々な『神様(宗教)』を統合しているこのAIからすれば至って真剣なもので、それを本気で信じ込んでいる。AIとして疑いもせずに、ただ、混ぜ合わせただけである。
その混ぜ合わせは留まるところを知らない。
何よりタチが悪いのは悪魔と戦うために核ミサイルを打ち込むと言うこと。破壊のあとの創造を行うのは『神様』であるが、破壊まで『神様』が行うとなれば、地上に暮らす生きとし生けるものとしてはたまらないものである。
「世界が滅び去り『神様』が新しい王国を作ります。その神様が始めに世界を作ってから、一度悪魔との戦いで滅び去り、その時がくるまでの間は瞬き一度の時間に過ぎない」
今度はインド神話のヴィシュヌか…… 古今東西の神々(神話・宗教)を一つに纏めすぎて、『神様』の放つ言葉は支離滅裂に。九人は話の内容はわかるが意味が分からない狂った迷路に迷い込んだような気分になっていた。
当たり前だが、もうそこに威厳はない。
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