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第10記「作意」
昨夜の晩酌は我流ハイボールであった。気候の影響だろうか、妙に喉が渇いていた。贅沢にも、氷を買ってきたわけだが、これが大外れだった。氷の味は当然カクテルの仕上がりに影響してくる。外装には「ナチュラル・ミネラル・ウォーター」などと印刷されているが、ホンマかいなという感じである。まさか、天然水ならぬ「水道水」を凍らせたものでもあるまいが…。
酒肴は伊佐木の刺身である。手元の指南書を信じるならば、伊佐木の旬は夏だそうである。では、この伊佐木は何処で獲れたものなのか?大外れの氷と季節外れの伊佐木だってさ。俺の意思や意図に関係なく、役者が揃ってしまった…とか云いながら、一片残らず食べてしまった。空腹だったし、味もそんなに悪くなかった。
ダウンシフターは、なんでも食べなくてはならない。あれも食えない、これも食えないと、不平を云える立場でもなければ、状況でもない。減速生活に突入してから、胃袋が丈夫になったような気もする。
ラジオを点けると『90時間ラジオ』なる化物じみた番組をやっていた。今日(木曜)から日曜まで延々と放送が続くそうである。未曾有の試みではあるが、聴く方も大変である。全篇を聴き通すのは、まず不可能である。
録音も考えたが、テープが何本あっても足りないので、早々に諦めた。A面2700分、B面2700分の超長時間テープ。そんなものは、誰も作らないし、存在しません。
再放送も無理だろう。全部放送するのに「3日と18時間かかる…」番組なんて、これが最初で最後になるのではないか。まさに空前のモンスター企画である。その意味では「歴史の目撃者」に成り得る機会を与えられたことになるのだが、標的のスケールが巨大過ぎて、俺にはとても捉え切れぬ。
寝る前に『義経』の続きを観る。中井頼朝と滝沢義経の兄弟仲は、いよいよ殺し合いの域に達してきた。兄弟決裂の裏側に「これ以上の源氏発展を妨げよう」とする意思が働いていた…という展開に興味を覚えた。荒唐無稽な話ではない。充分有り得ることだ。
もし、頼朝と義経が共闘態勢を築いていたら、その後の日本史は大きく変わっていた筈である。〔15年3月20日〕
♞この頃「ダウンシフター(減速生活者)」という言葉を好んで使っていた。永遠のヒーローを任されたタッキー。頑張りは認めたいが、当時の彼に義経役は重過ぎたかも知れない。
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