一筆送信篇 〔2014年と2015年の日記〕

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第11記「鬼才」  眼が覚めた。文字盤は「朝の7時」を示していた。湯沸かし器に水を注いでから、外出の支度をする。整った頃には、湯が沸いている。ささやかな朝食(ドーナツとコーヒー)をしたためる。戸締りを済ませ、家を出た。行き先は池袋の新文芸坐だ。  今日は「キューブリック特集」の初日である。館内(場内)は大層賑わっていた。第2回上映の頃には、立見(観)客が出るほどの盛況振りだった。映画館のスタッフが整理券を配っていた。  朝一番の回に潜り込んだので、座って観ることができた。早く来て正解であった。この歳になると、立見は辛い。本日の演目は、ピーター・セラーズ主演の『博士の異常な愛情』と、マルコム・マクダウェル主演の『時計じかけのオレンジ』の二本立てだ。黒喜劇&超暴力―凄い組み合わせである。  映画を観た後、俺は新文芸坐から東京芸術劇場へ移動した。劇場敷地内にあるアートショップの暖簾を潜り(実際には「暖簾」はないが)ポストカードを買い求める。自分用ではなくて、プレゼント用として使うのだ。  陳列棚を眺めていたら、適当な品を見つけた。和紙製のポストカード(三枚一組)である。予算内の価格だった。三組買う。同店はカードの他にも面白い商品がたくさん並んでいるが―財政問題が密接にからんでくるので―俺の購入できるものは自ずと限られてくるのだった。  帰宅後、熱いシャワーを浴びてから、おもむろに愛機を起動させた。ぴよぶっくを呼び出して、編集作業に没入する。殴り書きエッセイを2本投稿した。ダサクの続きも書きたかったが、文案がまとまっていないので、今日はやめた。無理はしない方がいい。  我が『次元鍋』も、66次元まで進んだ。まあまあのペースである。内容的にも、文章的にも、進歩や成長がまったく見られないが、頁数だけは順調にこなしている。次の更新は、来月になる。月が変われば章題も変わる。次回から「夏の陣」に突入である。  随筆に関しては、比較的楽に書ける(気がする)。材料の仕入れにも抜かりはない。脳内冷蔵庫は常に満タンを維持している。それは良いのだが、調理者である俺の腕が悪(鈍)過ぎて、せっかくの素材を殺してしまっている場合が少なくない。これ、どうにかならないか。〔15年3月29日〕 ♞『博士』と『時計』を映画館で観たのは、この日が初めて。家にテレビがない頃、新文芸坐に頻繁に通っていた。
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