地球最後の日

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「……神、ペテテロパス様ですか?」  田中が目をしばたかせる。  そんなわけは無い。目の前にあるのはただのつくりものだ。そもそもペテテロパスなんてものは存在しないのだから目の前の像が話すわけがない。  像からは返答はない。  それはそうだろう。像が話すわけなどないのだ。しかし、困った状況に陥った田中はもう一度だけ藁にもすがる気持ちで話しかける。 「神ペテテロパス様。もしそこにいるのなら返事をしてください」  田中が跪き、必死に下からペテテロパスの神像を見つめる。その姿は敬虔な信者のようにも見えた。信者を騙して金儲けのために嘘をついた田中が敬虔な態度を取るはずなどないのだが。  その場を静寂が支配する。やはり神からの返答はない。恐らくあまりに困った状況に陥ったので幻聴でも聞いたに違いない。こんな時に神頼みをするとはみっともない。一度も今まで真剣に神に祈ったことなどない田中を神が助けるはずなどないのだ。もし仮に神が存在してもだ。  田中は絶望のあまりに頭を床に突っ伏す。このまま苦しまずにここで床に顔を押し付けて窒息死でもすることが出来たらどんなによいことか。しかしそれは無理な相談だ。田中の口の隙間から嗚咽が漏れる。 「……くっ、くっ、くっ」  田中がガバッと頭を上げる。確かに今声が聞こえた。それは間違いない。やはり神が田中を憐れんで降臨されたのだろうか? 田中の疑わしそうに揺れるその瞳に見つめられながら神像が瞬きもせずに立ち尽くす。  田中は神像に全神経を集中する。しかし神像が動く気配はまったくない。ならば今の声はなんだろう? 密林で肉食獣に遭遇した小動物のように緊張した面持ちの田中に向かってもう一度声が聞こえる。 「くっ、くっ、くっ。神でもない俺がお前に返事をすることなど出来ない相談だな」   神像の後ろから黒い影が現れる。  田中が驚き思わずのけぞる。得も言われぬ恐怖を感じたからだ。そして黒い影をじっと見つめる田中の口から「あっ!!」という声が漏れる。
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