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「そうでございますね」
「嗚呼、こんな世の中でなければ、こんな身の上でなければ、僕は敏恵さんに」と言ったところで雄弁だった勝也が黙ってしまったのを見て敏恵は無性にその先を言わせたくなった。
「仰ってください!勝也さん!」
「あの、つまり僕は敏恵さんにあ、あ、愛の告白をしたかったんですが、したところで・・・」
「いいえ、なさってください!」
「そうですか、では、遠慮なく」と意を決した勝也はもじもじしながらも、「あの、僕、敏恵さんをあ、愛しています!」
「私も勝也さんを愛しております!」
元々敏恵は秀臣より勝也を好いていたが、今日の勝也に接する内、すっかり惚れ込んでしまったのだ。そうなることを勝也は無論、望んでいたのであり、そうなる敏恵を心底好きになった。で、二人はその後、柳のしだれた枝や葉が青嵐に激しく靡く下で全く自然の成り行きで接吻から始まり熱く篤く契るのだった。その際中、勝也は敏恵が処女でないことを知った。それを察して敏恵がはにかみながらも、「私、実は秀臣さんに・・・」
「秀臣に処女を?・・・」
「ええ、私、嫌だったんですけど無理矢理されてしまって、それで・・・申し訳ございません!」
「いや、謝ることはありません。秀臣も敏恵さんのことが好きなんです。ですから危惧してはいたんですが・・・僕が愚図だからいけないんです」
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