決闘

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 この奥さんには娘が一人いて勝也も秀臣も奥さんの家に通う内、この娘さんが好きになってしまった。名を敏恵と言って18と若く特に綺麗と言う訳ではないが、丸顔で童顔で愛嬌のある可愛いタイプで時折見せる含みのある笑顔が妙に彼らを惹きつけた。  どうせ帰らぬ征途につく身だ。勝也も秀臣も死ぬ前に敏恵と通じ思いを遂げておきたかった。勝也は童貞だけに秀臣は好色だけに・・・  それで二人の間に恋の鞘当てが起こり二人はあまり口を利かぬようになったが、奥さんが二人をもてなす間、敏恵も手伝いに来たりするから奥さんのみならず敏恵とも口を利けるようになって行った。  そこで特攻命令が下りぬ内にと先に動いたのが案の定、秀臣だった。  真夏の或る日、秀臣は奥さんの家に行って敏恵を連れ出し、町はずれの河川敷へ行って話すことにした。  議論好きな勝也と違って議論のできない秀臣は、僕はお国の為なら見事に散って見せますだの軍神になりますだの殉死しますだの命は惜しくありませんだのと綺麗事を並べ立てるしか能がなく無理矢理敏恵を感心させておいて愛の告白をした。  突然のことに彼女が戸惑っていると、秀臣は有無を言わさず強引に押し倒して彼女の処女を奪ってしまった。  秀臣は欲望を押さえつける理性がまるでなかった。その落ち度である野蛮性を紛らわせるため愛するあなたに何もできずに死ぬ訳にはいきませんでしたと仕方なく頭を下げた。
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