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そんなこととは露知らず、その三日後、勝也は秀臣と同じく敏恵を河川敷へ誘った。
「はあ、大分歩きましたね」と勝也。
「ええ」
「ここらで休みながらお話をしましょうか」
「ええ」
二人は柳のしだれた枝や葉で木陰になっている下草の上に腰を下ろした。
柳の葉がそよ風にしなやかに戦いでいる。空は太平の世のように晴れている。
「はあ、如何にも涼しげで心地よいですねえ」と勝也。
「ええ」
「而も空気が澄んでいてここに居れば、丁度いい陽気ですねえ」
「ええ」
「川面も澄んでいてとても綺麗ですねえ」
「ええ」
「敏恵さんの心も澄んでいてとても綺麗ですねえ」
「い、いえ・・・」
「ですから武士道を好む代わりに特攻隊を嫌うでしょう」
「えっ?」
「武士道は道徳的ですが、特攻隊は不道徳ですからねえ」
「そうなんですの?」
「ええ、神風特攻隊は実にけしからんと言うか神風特攻隊を崇める奴自体がけしからんのです。まあ、その辺は後で説明するとしまして実は僕は自分で言うのもなんですが、幾らか知性と知識を持っていると自負していますから幾らかひけらかしますが良いですか?」
「ええ、よろしいですわ」
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