決闘

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「では遠慮なく武士道に関して個人主義を交えて講釈めいたことをします。変わった奴だと思って聞いてやってください。えー、武士道の他者を敬う礼の心は個人主義の相互尊重の精神に通じ、武士道の正邪曲直を見極める為、上の者にも意見する忠義の心は個人主義の自分の意見を表明する精神に通じ、武士道の恥を弁え相手に恥をかかさず自分も恥ずかしい真似をせず高潔に生きようとする名誉を重んじる心は個人主義の相手と自分のプライドを大切にする精神に通じていまして当世の日本人はこれらの心が欠けている上に卑怯な真似をせず損得抜きに行動し人間として正しい道を貫き通そうとする義の心も、それを実践する為の勇気の心も、弱者、敗者に情けを掛ける仁の心も、人間の中身を洞察する智の心も、嘘をつかず誤魔化したりしない誠の心も欠けているのですから今こそ武士道を個人主義と上手く融合して道徳として是非とも学ぶべきなのです。そうすれば、武士道のアナクロな所、殊に忠義の心の中にある封建的な集団主義的な所を取り除いて武士道を近代的に正しく学ぶ事が出来ます。但、忠義の心にもさっき申した通り、学ぶべき所が有りましてね、時代錯誤も甚だしいと全面的に馬鹿にするべきではないですよ。何しろ、この忠義の心には自分の正義に忠実であろうとする思想が含まれていまして、それ故にそこの所は絶対、学ぶべきなのでありまして、それ程までに武士道は道徳的なのです。それだけに当世の日本人は政府がプロバガンダで悪用する武士道にしか向き合うことが出来ません。それ位、精神が腐敗していまして尚且つ情けない事に政府に間違った武士道を押し付けられても盲従して政府のイエスマンであり続けるのです」
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