決闘

5/11

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「どうしてそうなるのでしょうか?」 「それはですねえ、明治維新以来、西洋の文明を取り入れるも上滑りの開化になって日本国民一人一人が未熟に近代化して和魂洋才を実現できず正しい個人主義を身に着けることができず集団主義且つ全体主義の儘で自分の中に確固たる価値観倫理観を創造できないからです」 「はあ、そうなんですの?」 「はい。そしてですね、戦場で華々しく玉砕したとされる勇猛そうな神風特攻隊員達とて同じ事でしてね、お国の為に死をも厭わず志願して入隊してくれたなぞと上官が言ったり、出撃前、お国の為に喜んで死んで参りますと特攻隊員が言ったりしますけど、それは建前に過ぎないのでありまして本音は死にたくないのに、家族を残して死にたい筈が無いのに、況して愛する人がいれば、尚更で愛する人を残して死にたい筈がないのに、国賊にされたくない、家族を非国民呼ばわりされたくない、死んでからも皆と同様に扱われたい、皆と同様に靖国に葬られたい祀られたいという村意識も手伝って上官の無謀な命令に対し、皆と同様に逆らえない儘、已む無く入隊して出撃し、無駄死にしてしまうというのが実際の所でありまして武士道の忠義に全く悖る、それこそ政府のイエスマンに過ぎないのですよ!」 「はあ、なるほど、そうですわね」と敏恵は言いながらも、でも勝也さんはと言いかけたが、その声が小さくて聴き取れなかったらしく勝也は続けた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加