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「さっさと降伏すれば良いのですよ。降伏した所で侵略した領土が没収されるだけの話で本土の割譲を迫られる訳ではないんですからね。事実カイロ会談後、前もって宣言されている事なのでして、それに従って悪の戦争で得た領土なぞ潔く返還すれば良いのですよ。況して降伏しなければ益々戦局が悪化する事が必至の状況なんですから早いとこ降伏する方が良いのですよ」
「言われてみれば、そうでございますね」
「ええ、降伏って言うと体裁悪いようですが、本土決戦に備える、上は大本営の国体護持の鬼と化した頑迷固陋の低能無能参謀どもから下はそいつらに唯々諾々と従うしか能がなく国民義勇隊なぞと都合よく名付けられた奴隷兵卒どもまで、この馬鹿どもと一緒にされる方がよっぽど体裁悪いと認識しないと駄目です!原爆落とされてやっと自分らの馬鹿さ加減に少し気づいた位なんですからね。謂わば、この左巻きどもは国を守る為に戦っているのではなく滅ぼす為に戦っているのです。実際、日本人は大本営発表によれば、一億玉砕ですが、事実上、一億全滅という気違い思想の囚われ人として戦っているのです。実際、危急存亡の秋に瀕し日本は絶滅の道を選んで戦ってるのであってですねえ、どいつもこいつも正気を失い血迷ってるんですよ。事の出所は軍国主義、国家主義、更に突き詰めれば、全体主義、集団主義です。これが為に無理が通れば道理が引っ込むで政府が自分勝手に一億全滅を一億玉砕と塗り替えて物の道理とすれば、それが国民全体の真理になってしまうのです」
「全く恐ろしいことでございますわ」
「ええ、ですから僕は日本人の相も変わらぬ集団主義的全体主義的体質を非難するのであってですねえ、今の儘では分かり切った事を常識として捉えられなくなるんですよ。つまり戦争は大量の犠牲者を生む大量破壊大量殺戮に他ならず如何なる理由が有ろうともやってはいけない事なのであって絶対悪という事を歴史が証明しているのですから遣らないに若くはなく戦争に反対する事こそが正義であり勇気なのにそれが常識でなくなるんですよ」
「戦争に反対する事こそが本物の正義であり勇気なのでございますね」
「ええ、それに鑑みますと、神風特攻隊員は本物の正義のみならず本物の忠義の心を持っておらず勇気にしても匹夫の勇しか持っていないばかりか他の者たち同様、集団に重きを置き、己を軽んじ、自分を持たない人間ですから愚かにも皆と一緒に悪の戦争に参加して多くの人を殺して自分も殺してしまうのです。僕は逆に己を重んじ、自分を持った人間ですから戦争に参加する事を潔しとしませんし、戦争なんかで自分の尊い命を落とすなんて真っ平御免ですから、出来れば、戦争反対!と叫んで腰抜けどもに腰抜け!と罵られ、此の世の不正不条理をしみじみと感じながら花と散りたいです。そんな戦争反対と叫ぶ良識ある者が被害者となり、愚かな政府の推進する戦争を翼賛する事が常識となる不正不条理な世の中に我々が生きていることは争えない事実ですよ」
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