怪獣になってしまうその前に

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 空をドローンが飛んでいる。  最近は登校時間に犬の散歩をする人や、ジョギングをする人よりも、ドローンのほうがよく見るようになった気がする。  それでも今日はまだゴミの日があるから、まだ通りに人が歩いているほうだ。前よりもペットボトルも空き缶も見なくなったはずなのに、それでもゴミが落ちるのはなんでだろう。  私は学校に向かっている中、ゴミ出しに来たおばさんたちが密やかに会話しているのが耳に入った。 「ほら……あそこのホーム、とうとう出たらしいわよ。深度3が」 「本当に怖いわね……深度4になったら、もうどうしようもないんでしょ?」 「あそこの会社がねえ……」 「ほーんとうに」  通り過ぎるとき、おばさんたちをちらりと見た。  多分あの人たちは、深度が全く進んでいない人たち。ホームにいる人たちは深度が進んでいるということで、このところホームを撤去すべきかしないべきかで争っているところだ。  最初はもっと非日常に囚われて、いったいどうしたらいいんだろうと途方に暮れていたのに。いつの間にやら非日常はすっかりとくたびれた庶民的なものになってしまった。  ネットが使えない。ライフラインはかろうじて守られているものの、私たちはこの街を出ることができない。ただ、いつ発症するかもしれないものに脅え、明日のことなんて全く予想もできなくって、必死で耳を塞いで、今日が終わって明日が来るのを祈り続けている。もう三日以上未来のことを考えることなんて、私たちにはできなくなっている。 「あの子」が死んでしまってから、私は全部が終わる日を、待ちわびている。
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