私と彼と君

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 運動会当日。  私は4時に起きて、購入した重箱いっぱいに料理を詰めこんだ。暁君はハンバーグより鶏のから揚げが好き。それからクリームコロッケも美味しそうに食べていた。さつま芋の天ぷら、すぐに食べ終わっていた記憶がある。野菜ではブロッコリーとアスパラが好きみたい。だからたくさんブロッコリーを湯がいて、アスパラはベーコン巻きにした。卵焼きは少し甘めのふわふわの。にんじんはグラッセにした。おにぎりはおかかと梅、とろろ昆布の3種類作った。  暁君、喜んでくれるかな。  前の奥さんはお弁当を作って応援に行ったことがないという。彼女がなぜ自分の子供にそんな態度をとっていたのかは分からない。本当に愛していなかったからなのか。私には思いもつかない理由があったのかもしれない。私は暁君を産めなかった。血のつながりはない。でも、そんなことは関係ない。私は暁君の母親になったのだ。私はこれからも暁君を傷つけてしまうことがあるだろう。でも、その度にそれを上回る愛情を注いで暁君を幸せにしていきたい。暁君に「愛されてない」なんて、絶対思わせたくない。  不思議。結婚することさえ考えられなかった。ましてや、子供がいる未来なんて考えられなかったのに、私は今、暁君中心に生活が回っている。そしてそれが嫌ではない。 「うわあ、凄い豪華だね。朝早くからお疲れ様」  敬一さんがあげたばかりの唐揚げを一つひょいと口に入れた。 「美味しい」 「良かった! 朝ごはんは別に用意してるからそれを食べましょ」  暁君を驚かせたいので、詰め終わった重箱の蓋を閉めておく。 「おはよう」  体操着姿の暁君が目をこすりながらおりてきた。 「良い匂いがする」 「でしょう? お弁当期待しててね。さ、顔洗って、目を覚まして。暁君の頑張ってるところ、しっかりカメラで撮るんだから、そんな顔してちゃだめよ」 「大袈裟」  口ではそう言いつつも、暁君の目が笑んだのを私は見逃さない。  朝ご飯を三人で食べて、一緒に家を出た。重箱、ブルーシート、カメラ、日焼け止め。準備は万端だ。  
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