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ところが。
この三ヶ月は怒濤のように過ぎていった。自分に一体何が起こったのか未だに心が追いついていない。
鏡に映った私はウエディングドレスを着て、途方に暮れた顔をしていた。
敬一さんが離婚してまだ三ヶ月ということもあり、今日は身内だけの結婚式。母は複雑な顔をして私を見ている。
「あんたも32才にもなるから結婚してくれるのは嬉しいけれど、バツイチ子持ちだなんて、ねえ。まさか不倫なんてしてなかったでしょうね?」
私は背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「ま、まさか! 敬一さんは営業先の課長さんで、もともと知り合いではあったの。奥さんと別れてから気落ちしてらして、相談に乗るようになってから急にプロポーズされて……」
ということにしてある。が、小学五年生の息子、暁君が敬一さんについてくるなんて誰が予測しただろう。
私は結婚していきなり一児の母親になることになってしまったのだ。
三ヶ月前、敬一さんが離婚してから初めての食事の時に、暁君はついてきた。私は自分の頭が理解できる範囲を超えて煙を出しそうになるのを感じた。敬一さんから息子がいることは聞いていた。聞いていたけれど。
「息子の暁です。俺、母さん苦手だから、父さんを選んだんだ。あんたは父さんのふりん相手だろ? たぶん」
暁君の第一声に私も敬一さんも石のように固まった。そんな私たちをどこか楽しそうに見上げながら、暁君は、
「別に俺、気にしないから。あんた飯作れんの?」
と続けた。
あんた、あんたってさっきからこの子は……。
私はひくつく頬を無理やり引き上げる。ここでこの子に嫌われるわけにはいかない。
「上手かはわからないけれど作るのは好きよ」
私はの答えに、
「ふうん。……じゃあ、これからよろしくお願いします」
暁君は最後だけは子どもらしく頭を下げたのだった。
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