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──迎えた、翌日。
「かりんー、更新分読んだよー」
ホームルームが終わるやいなや、昨日LINEを送ってきた「ひな」が、デニーズのスイーツでも食べたかのようなとろけた笑顔で、私の机に駆け寄ってきた。
「ありがと」
「ひな」こと日奈子の言葉に、私の気分は高揚するが、極力平静をつとめて返答する。
「でも、凄いよねー。『氷河』のメンバー」
テンションが上がってきたのか、日奈子は口角泡を飛ばしながら、机に座っている私に小説の感想を告げる。
ちなみに、「氷河」というのは、私の小説に出てくる暴走族のチーム名である。
「麗美ちゃん。
誰にも居場所を告げずに、友達を助けに行ってるのに、『氷河』のメンバーすぐに麗美ちゃんのピンチに駆けつけるんだもん!
あのシーン、凄く感動したよ!」
「あれは、麗美と『氷河』のメンバーの絆を書きたかったのね。
ちょっと都合のいい展開かな、って思いながら書いてたんだけど、そういう風に言ってくれると本当嬉しい」
作家然、といった態度で私は淡々と返すが、内心はガッツポーズしまくっていた。
「で、輝も素直じゃないよね。
麗美の事が好きなクセに、それ言わず、ずっと黙ってるし」
「……輝はそういうキャラだしね」
答えた私は、大きなアクビを一つする。
「大丈夫、花凛。
なんか、凄い眠そうだけど」
すると日奈子が、ただでさえ大きい目を丸くさせながら、私に訊いてきた。
「今回の更新分、結構『難産』だったからね……」
言った私は、アクビにより目尻に溜まった涙を人差し指で拭う。
「お疲れさまです、お母さん」
「いえいえ」
「でも、『難産』って言ってるけど、凄い更新されてたじゃん。
昨日、結局諦めてアタシ寝たんだけど、朝起きたら、10ページくらい一気に更新されてたから、こっちは読むの大変だったよ」
「書けない、って思って悩んでたんだけど、いざ書いたら何か止まらなくなっちゃったんだよね……」
結局、あの夜に私は11ページ小説を執筆したのだが、そのページ数をキッチリと日奈子が全部読んでくれた事に対し、私は思わず口元を緩める。
「おかげで書きすぎて、右手は腱鞘炎っぽくなるわ、寝不足やらで大変だよ。
でも、書ける時に書いとかなきゃ、次、またいつ執筆に詰まるか分からないもんね。
つーかね、昨日ちょっとテンション上がる出来事があったのが、更新スピードが上がった原因かな……」
「何、それ?」
私の「話を聞いてくれ」オーラを察してくれた日奈子は小首をかしげると、その身をにじり寄せながら尋ねてきた。
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