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──今日の授業が全て終わった。
こうやって、改めて記すまでもないくらい、退屈な授業であった。
「かりんー。駅前のガストに行こうぜー」
ホームルームが終わり、解散となった時、日奈子がバッグを肩にかけながら私に尋ねてくる。
私は「いいよ」と返し、日奈子に続いてバッグを肩にかけた。
ちなみに、駅前のガストは私や日奈子に限らず他の生徒も愛用しており、我が校御用達のガストである。
「じゃあさ、花凛。
そのついでに、『爽やかイケメン』がいるっていう例のコンビニに寄ろうよ。
花凛のマンション、駅に行くまでに寄れる場所じゃん」
朝の私の話がよほど気になったらしく、日奈子は目を輝かせながら言ってきた。
「まぁ、いいか。寄れない距離じゃないし」
私は頷くと、日奈子と一緒に自転車で下校し、例のコンビニに入ると「アラケーさん」がいないか、それとなく店内を確認してみた。
「アラケーさん」は、いなかった。
代わりにいたのは、演劇で「女性A・B」とでも称されるような極めて無個性な店員二人のみであり、私と日奈子は心持ち落胆した。
「花凛、その人を見たの何時くらいなの?」
自転車に鍵を差し込みながら、日奈子が私に問い掛ける。
「夜の11時前。
日奈子が昨日、LINEを飛ばしてきたくらいの時間だよ」
「じゃあ、花凛の家に泊まった時じゃないと、そのイケメンは見れないって訳か」
言い終えた日奈子は、ため息を一つつく。
「……あの、あんまりハードル上げないでね。
その、イケメン。
アタシ、昨日初めてチラッと見ただけだし、ひょっとしたら日奈子の期待に応えられないかもしれない」
「いや、アタシは花凛のセンスを信じるよ」
鼻息を荒くさせながら日奈子は言うと、自転車のサドルに股がった。
「あっ、日奈子。
ついでだから、バッグを家に置いてきていい。
すぐ、戻ってくるからさ」
ちょうど、自宅の真下に来たという事もあり、バッグを肩にかけながら私は日奈子に尋ねる。
「いいよー。
じゃあ、アタシ。ここで待っとくから」
日奈子は返すと、制服のポケットからスマートフォンを取り出し、今、夢中になっているという乙女ゲーをやり始めた。
「じゃ、行ってくる。ゴメンね」
コンビニ前で乙女ゲーに夢中になっている日奈子に告げると、私はマンションのエントランスをくぐり、エレベーターへと向かった。
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