●Free

4/13
前へ
/373ページ
次へ
──今日の授業が全て終わった。 こうやって、改めて記すまでもないくらい、退屈な授業であった。 「かりんー。駅前のガストに行こうぜー」 ホームルームが終わり、解散となった時、日奈子がバッグを肩にかけながら私に尋ねてくる。 私は「いいよ」と返し、日奈子に続いてバッグを肩にかけた。 ちなみに、駅前のガストは私や日奈子に限らず他の生徒も愛用しており、我が校御用達のガストである。 「じゃあさ、花凛。 そのついでに、『爽やかイケメン』がいるっていう例のコンビニに寄ろうよ。 花凛のマンション、駅に行くまでに寄れる場所じゃん」 朝の私の話がよほど気になったらしく、日奈子は目を輝かせながら言ってきた。 「まぁ、いいか。寄れない距離じゃないし」 私は頷くと、日奈子と一緒に自転車で下校し、例のコンビニに入ると「アラケーさん」がいないか、それとなく店内を確認してみた。 「アラケーさん」は、いなかった。 代わりにいたのは、演劇で「女性A・B」とでも称されるような極めて無個性な店員二人のみであり、私と日奈子は心持ち落胆した。 「花凛、その人を見たの何時くらいなの?」 自転車に鍵を差し込みながら、日奈子が私に問い掛ける。 「夜の11時前。 日奈子が昨日、LINEを飛ばしてきたくらいの時間だよ」 「じゃあ、花凛の家に泊まった時じゃないと、そのイケメンは見れないって訳か」 言い終えた日奈子は、ため息を一つつく。 「……あの、あんまりハードル上げないでね。 その、イケメン。 アタシ、昨日初めてチラッと見ただけだし、ひょっとしたら日奈子の期待に応えられないかもしれない」 「いや、アタシは花凛のセンスを信じるよ」 鼻息を荒くさせながら日奈子は言うと、自転車のサドルに股がった。 「あっ、日奈子。 ついでだから、バッグを家に置いてきていい。 すぐ、戻ってくるからさ」 ちょうど、自宅の真下に来たという事もあり、バッグを肩にかけながら私は日奈子に尋ねる。 「いいよー。 じゃあ、アタシ。ここで待っとくから」 日奈子は返すと、制服のポケットからスマートフォンを取り出し、今、夢中になっているという乙女ゲーをやり始めた。 「じゃ、行ってくる。ゴメンね」 コンビニ前で乙女ゲーに夢中になっている日奈子に告げると、私はマンションのエントランスをくぐり、エレベーターへと向かった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加