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しかし、寝る訳にはいかなかった。
前述したように、私は(自分で言うのは、ホントおこがましいんだけど)サイト内ではちょっとした人気作家なのである。
たとえ、1日でも更新を休んだら、読者さんから
『Twitterなんてやらずに、更新してくださいよ!』
『今日、更新無かったんですけど、どうしたんですか?』
といった、更新を催促する声がTwitterでのリプライだの、サイト内での感想といった形で、何かしら入ってくる。
前述した友人の瀬菜に至っては、5ちゃんねるに自分の事を散々書かれたらしく、こっちがなだめるのも躊躇するくらい、Twitter内でわめき散らしていた程だ。
──たとえ、1ページでも書かなきゃ読者さんって満足しないんだよね。
思った私は、机の上に突っ伏したまま、おもむろにスマートフォンを手に取った。
しかし、書き出す文章が浮かばない。
睡魔が、営業を終了したスーパーのシャッターのように、私の脳内に幕を下ろしにかかっているからだ。
「ダメだ、ダメだ」
私は机から身体を起こすと、眠気覚ましとばかりにブンブンとかぶりを振った。
そして、壁に掛けられているセサミストリートの時計で時刻をそれとなく確認してみる。
──10時45分。
知らぬ間に、10分近くも経っていた。
よく、漫画家が「スランプ」とか言って頭を抱えているシーンをおまけ漫画とかで描いてるけど、今の私はまさしくそれだろう。
「……炭酸、買ってこよう。
頭をスッキリさせる為には、それしかない」
思った私は立ち上がると、脱ぎ捨てていたパーカーとジャージを身にまとい、ポケットに500円玉を一つ入れ、自分の部屋を出た。
玄関への通り道であるリビングのドアを開けると、お父さんと弟が共にソファーで、芸人がMCをつとめているバラエティー番組を見ていた。
「どうしたんだ?」
風呂上がりなのか。
お父さんがTシャツと短パンといった格好で、テレビから視線を私に移し、訊いてくる。
「あっ、ちょっと下のコンビニに行ってくる」
「何時だと思っているんだ」
「すぐ、戻ってくるよ」
威厳ゼロの格好から発せられるお父さんの咎め立てに、私は淡々と言葉を返すと、玄関へと通じるドアノブに手をかける。
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