●Magic Time

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エレベーター前に、到着した。 私は、[Alexandros]の「ワタリドリ」を鼻歌で歌いながらエレベーターに乗り込むと、一階のボタンを押し、その着床を待つ。 栓を抜かれたタンクの目盛りのように、ゆっくりと4から1へ下降していく、階数表示。 私はエレベーターを降りると、エントランスを突き抜け、マンションにテナントとして入っているコンビニに入った。 「いらっしゃいませー」 入店するやいなや、レジから聞こえてくる、都会にありがちな人情味ゼロの挨拶。 その挨拶を耳にしながら、私は弟に頼まれた少年ジャンプを購入する為、書籍コーナーへと向かう。 先客が、既にいた。 塾帰りなのか、その男は学生服のまま、「アカギ」という名のコミックスを、脇目もくれずといった感じで読み込んでいた。 「すばる」 パーカーのポケットに手を突っ込みながら、私は学生服の男に言葉をかける。 「あっ、あぁ……」 すばるは顔を上げ、私に視線を向けると、声をかけられると思っていなかったのか動揺を(あらわ)とさせた。 「アンタ、何やってんの? 塾、終わったんなら早く帰りなよ。 ネカフェみたいに、ここで漫画読むんじゃなくてさ」 「いや、この漫画。 初めて読んだんだけど、なんか面白いんだよ」 コミックスを片手に持ちながら、すばるは弁明する。 「知らねえよ」 私は肩をすくめた。 「っていうか、お前は何しにこんな時間にコンビニに来たんだよ」 すると、私に言われっぱなしで、我慢出来なくなってきたのか。 すばるは、未購入のコミックスを陳列棚に戻すと、私に身体を向け言葉をまくし立てた。 「もう、11時前だろ。 女がこんな時間にコンビニに来るとか、普通に考えて危ないだろ。 人に注意する前に、自分こそ何してるか考えろよ」 「どうも、頭がスッキリしないから、コンビニに炭酸飲料を買いに来ただけだよ。 すぐに帰るし、アンタは余計な心配しなくていいんだよ」 同級生である渡辺すばるに私は淡々と告げると、続きを口にした。 「そんで、ついでにジャンプを買ってこい、って弟に頼まれた訳。 つーか、制服のままのアンタに注意されたくないね。 一体、何冊ここでタダ読みしてんだよ。 こんなトコで漫画、読みふけってんじゃねえよ。 もし、顔見知りじゃなかったら、『キモ!』って心の中で呟いて、 『さっき、コンビニ行ったら、変なヤツが漫画を夢中になって読み込んでいた』 って、思わずツイートしてるトコロだよ」
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