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「お前、いくらなんでも失礼すぎるだろ!」
私の猛攻に半泣きとなったすばるは、静まり返っているコンビニ内で声を荒げた。
同時に店内にいる数人の客が、一斉に私達二人の方を見た。
「……もう、アンタが怒鳴り声とかあげるから、皆、一気にこっちを見てきたじゃん」
私はすばるに肩パンを食らわせると、バスケットを手に取り、弟に頼まれた少年ジャンプをそこに入れる。
「お前が、くだらない事を言うから……」
「さっさと、家に帰りなよ」
これ以上は取り合わない、という感じで私はすばるの言葉を遮ると、書籍コーナーを後にし、本来の目的である飲料コーナーへと向かった。
ビタミンCを売りにした、炭酸飲料があった。
値段、サイズ、共に妥当だ。
それなりに脳を活性化させ、小説を2ページ程更新させるには最適な飲料だろう。
私は少年ジャンプに続いて、小瓶に入った炭酸飲料を一つ、バスケットへと入れた。
その時だ。
コンビニの外から、けたたましい原付バイクの音が聞こえてきた。
「……あっ」
見覚えのあるその顔に、私は声を上げた。
が、素知らぬ振りをして、そのままレジへと向かう。
「渡辺ぇ!
お前電話してこいって、俺、ちゃんと言ったよなぁー!」
ろれつの回っていない、ダミ声。
焦点の定まっていない、目。
シンナーかドラッグでも決め込んでいるのか、どう見ても「取り扱い注意」のその男は、書籍コーナーで立ち読みを続けていた渡辺すばるの首根っこを掴むと、そのまますばるを店外へと連れ出していった。
──あんな奴らと付き合っても、いじめられなくなるとは、とても思えないんだけどねぇ。
小中高、と一貫して「いじめられっ子」であった渡辺すばるが、一念発起して付き合いを始めた「リアル不良」の後ろ姿を見つめた後、私はレジへと視線を戻す。
すると、突然の不良の訪問に、店内にいた客全員が怯んでしまったのか。
これまで、何をするともなく佇んでいた数人の客は、早くコンビニから立ち去りたいのか、一斉にレジへと向かい、最後尾となった私はなかなか商品を精算してもらえず、しばらくの間立ち往生を続ける事となった。
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