90人が本棚に入れています
本棚に追加
74
早朝。
柄にもなく早起きして、俺はまた軽装に着替えて、そそくさと廃屋の自宅を出た。
履いているジョギング用のスニーカーが、足取りをいつもより軽くしてくれる。
俺はそのまま海沿いの道を、軽くジョギングした。
こんなことを、朝早くからやりたくなんかなかったはずだが、何故だか、身体が朝になると動いて、こうやって海沿いの道を走ることになる…。
何を望んでいる?
自問自答してみる。
折り返し地点から戻って、また軽くジョギングする。
本当は、自分でよくわかっている…。
ひょっとしたら、また何処かから、彼女が出てきて、俺と一緒に走ってくれるんじゃないかと…
そんなくだらないことを望んでいる。
だから彼女の言いつけを、今でも守っている。
「あれはちゃんとやってください。あれは絶対健康に良いですから。是非続けてください」
彼女は最後も、そう言ってたっけ…。
わかったよ、
これからも続けるよ…。
本当に健康の為かどうか…
本当はただ、また彼女が何処かから現れて、俺と一緒に走ってくれるのを望んでいるだけなのかもしれない…。
「未練がましい野郎だ!」
俺は自分に向かって、そう言い捨ててから、また帰りの道をジョギングして帰った。
もう美紗子がいなくなった、廃屋の自宅に向かって…。
(終)
最初のコメントを投稿しよう!