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交番の中に入り、根来巡査と俺は、まるで取調べのように、お互い机を挟んで差し向かいで椅子に座り、睨み合う態勢を取った。
根来は中々に美形な顔立ちの好男子だった。
「さあ、これであんたは今警官として仕事をしている恰好がついた。だが取調べをするのはこっちの方だ。後は今から聞くことに真面目に答えてくれりゃあいい」
「わ、わかった」
「腰道具のS&W社製M360J SAKURAを紛失し、それで裏のルートで同じリボルバーを購入したな。誰から買ったかはわかっている」
「売人が喋ったのか?」
「いいや、売人は秘密絶対厳守を貫いて、あんたのことを隠してたよ。俺の推察と調査によるものだが、図星だな」
「…。」
「実はそのことをどうこう言うつもりはない。警察にも世間にもバラすことは絶対ないから安心しろ。聞きたいのは、余程の事情がないと拳銃を売らない、その売人のことを、昔の同僚警察官に教えなかったか?ってことだ」
「い、いや…」
「あんたの元同僚ってのは、出世頭で本庁捜査一課の刑事をやっていた橋本了一のことだ。知ってるな?」
「あ、ああ」
「橋本に売人のことを教えなかったか?」
「…。」
「あんたが腰道具を紛失したことをどうこう言うつもりはないし、警察にも世間にもバラすことは絶対ないとさっき言ったよな。だが、それはあんたの出方次第だってことを忘れるな」
そう言うと、根来は美形な顔を少し困惑して歪め、やがて手で顔を覆ったが、しばらくして、
「教えたんじゃなくて…俺が教えられたんだよ…」
と小声で呟いた。
「何?どういうことだ?」
俺はさらに根来に続きを促した。
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