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タンスの一番上の引き出しをそっと開ける。
取り出したのは衣類ではなく赤いマニュキュアの小瓶。
手のひらでそれを転がすと、中に入っている金属の玉が小さな音を立てた。
左手の親指から順に、綺麗に切り揃えた爪を丁寧に赤く染め上げていく。
右手もそうして飾り立ててから、一件のメールを送信する。
数分と経たずに返事が来て、ひとつ息をついた。
塗ったマニキュアがしっかり乾いた頃、来客を告げるチャイムが鳴った。
「……待ってたよ、令次」
少し伏し目がちな視線で令次を迎え入れた秀は、彼をリビングではなく寝室へと誘う。
男の割に華奢な秀の手を取り、令次は満足そうにその手指を撫でた。
「──秀さん。何をして欲しいのか、言って」
「……うん。俺、お前に……」
ここから先は、二人の秘密の時間。
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