「笑う君と 死んだ君」

2/2
前へ
/15ページ
次へ
それはあまりに突然だった。 『今朝  富山(とみやま)が亡くなった。』 いつも以上に神妙な担任の言葉に 教室内の時空が凍る。 『いーじゃん  受けてみなよ!教育学部。片柳君頭良いし  大丈夫だって!』 『・・・そう・・・かな・・・』 『そうだよ!今やらなきゃ絶対後悔するって!』 真っ白な進路希望調査用紙を前に  あやふやな反応をする自分の背中を叩く君は  満面の笑みだった。 君が死んだ。 なぜ死んだのか。 どうやって死んだのか。 どのような状況なのか。 全く頭に入ってこない。 ただ「君が死んだ」という事実だけが  静かに駆け巡る。 葬儀は近親者のみで済ませたと言うから 正直  事実さえ信じられなかった。 でも 君は  それから一度も学校に来なかった。 携帯番号も  使えなくなっていた。 ロッカーも机も  いつのまにか空っぽになった。 君が死んだ。 事実だった。 
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加