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「不良品の僕と そっくりな君」
「だからね、いつまでも学生気分でいられちゃ困るんだよ。何度も言うようだけど」
・・・学生じゃないけど
「職員会議で全員一致だったでしょ?どうして今になって言ってきたわけ?」
何も言わないと怒るくせに、何か言っても怒るんだ・・・
「今まで何回も失敗してーーー」
・・・もうだめだ。何言ってるか分からなくなってきた。
「・・・すみませんでした。」
吐き出したいことが山ほどあるのに
視線を下にずらして平謝りするしかない自分が、とてつもなく嫌気づく。
「誤解しないでね。私は君は教師に向いていると思うから」
・・・嘘つき。
そんなこと微塵にも思ってないくせに。
単に労働力をつなぎとめておくための決り文句・・・と思ってしまうのは、自身がすっかりひねくれていることを体現しているのだろうか。
心の中でボソッと言い捨てたくなった。
一人残された視聴覚室の中で悶々としていると、授業開始のチャイムと共に何十人もの足音がせわしなく駆けていく。
・・・のんきなやつら。
きっと この世のリアルに飲み込まれていない無垢な体なんだろうな。
ある意味感じる羨ましさと その頃には戻れない軽い諦めと ぶつけようのない嫉妬心がぐちゃぐちゃに絡み合って 封じ込められる。
君を失った喪失感を埋めるように
いつのまにかこの世界を勉強して
いつのまにか一生懸命になっていたつもりで・・・
「せんせーさよーならー!!」
低学年のグループがバタバタと帰っていく。ランドセルが落ちてしまいそうだ。
あの子の名前 何だったっけかな・・・。
校門で手を振りながら 頭の中は呆然としていた。
講師として働いて2年目。教員採用試験には2回落ちた。
でも
彼らにとって、教諭も講師も関係ない。「先生」なのだ。
その肩書きが 時に体を縛り付ける。
いったい自分は何をしたいのか。どうして憧れを抱いたのか。
その全てが霧を被ったように見えなくなる。
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