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渦巻く深淵、それが我が民を苦しめていた。神の力を賜った偉大なるファウストは、それらと戦った。
偉大なるファウストは、数多の深淵を打ち滅ぼした。
しかし、その長い戦いも、眼前に渦巻く深淵を倒せば、ようやく終る。
神は民を救われる。全ては我が神のため、全身全霊をささげたファウストが最後の敵に刃を与えた時、ファウストは全てを失った。
「おぉ、我が神よ」
渦巻く深淵が、我が身を切り裂こうと、漆黒のゆらめきを持つ穢れを放ってくる。深淵を打ち滅ぼすための神の力は、放たれないでいる。
「なぜ私から力を奪うのだ。私は貴方の剣では無いのか」
そんな懇願は誰にも届かず、渦巻く深淵がファウストを追い立てる。
神の力を失ったファウストには、それらに抗うことしか出来ない。
自らに縋り付いてくる穢れを払う。
「おぉ、我が神よ。なぜ、貴方は私を裏切ったのだ」
はたして、力を失ったファウストは、神の御許を目指すことになったのである。
命からがら生き延びたファウストは、草や岩のまばらな大地を歩いていた。
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