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 突然だが、諸君は脱サラという言葉をご存知だろうか。  ──脱サラリーマン。そう、読んで字のごとくサラリーマンを脱することである。  上司や御局様に媚びへつらい、呼び出されれば休日出勤、有給なにそれ美味しいの?……そんなクソみたいな会社勤めから抜け出して、自分の好きな道を突き進む──詳しく説明するならこんなところだ。  これだけだと夢のある話に聞こえるかもしれないので一つだけ補足をしておくが、よほどの信念や覚悟がない限り、脱サラなんてするべきではない。  なんとなく「よっしゃ起業でもしてみるか!」なんて軽い気持ちでしようものなら、確実に痛い目を見る。  何でそんなことが言い切れるのかって?  それはこの俺、立花(たちばな)灸太郎(きゅうたろう)が実際に軽い気持ちで脱サラをして、現在進行形で痛い目を見ているからに他ならない。    半年前に両親の反対を押し切って勤めていた会社を辞めた俺は、貯めた金を全て使って小さな喫茶店を開業した。 『喫茶(きっさ)タチバナ』──それが俺の喫茶店の名前である。  
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