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原因は言うまでもなくドラッチェにあるのだが、当の本人はというと、
「うわっ、いきなり何だよ。大声出したらビックリするじゃないか」
ピクピクと肩を痙攣させて悶えている俺に、何だこいつと言わんばかりの視線を向けていた。
「何だよじゃねーよ! テメェの力が強すぎるんだよバカ! あぁぁ痛ってぇ……」
俺の背中には、未だにジンジンとした疼痛が続いている。
背中の皮が丸ごと剥がされたような、人生でトップスリーに入るぐらいの、シャレにならない痛みだった。
「キュータローの要望通り、少し強めでやってあげたのに」
「少しの意味を今すぐ辞書で調べてこい!」
「むう……わかったようるさいなー、もっと弱くすればいいんだろ?」
げっ、まだやる気なのかよ。冗談じゃない、これ以上やられたら本当に死んじまうぞ。
善意でやってくれているこいつには悪いけど、ここは断らせてもらおう。
「いや、もうやらんでいい!」
「まだ一回しかやっていないじゃないか」
「その一回でお前の感謝は十分に伝わって来たから!」
「ふむ……? まあ、キュータローがそう言うなら、ここまでにしておくか」
よし、なんとか煙に巻く事が出来たみたいだな。
──と、俺が胸を撫で下ろしたのも束の間、
「それじゃあ次は我輩の番だな!」
「は?」
檜の椅子に座ったドラッチェは、身体に巻いていたタオルをターバンのようにして長い金髪をまとめると、透き通るような白い背中を俺に向けて、
「我輩の背中も、友情や愛情や感謝の気持ちを込めて洗い流すがよい!」
こいつ……。
でもまあ、やられるよりはやる方がマシか。
「人に物を頼むんだったら偉そうにすんなよな、王様かよ」
「フフン、我輩は実際に王様の娘だもんね」
「はいはい……ったく」
俺はため息をついて立ち上がると、ドラッチェの後ろに回った。
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