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 冗談じゃねぇ! 俺はノンケ(異性愛者)だ! 「あ、あの……青柳さんってもしかして……男が好きだったり……?」 「いいや?」  俺が声を震わせながら尋ねると、青柳さんは俺の太ももから手を離して、軽い調子で首を横に振った。  なんだよ驚かせやがって。  でも良かった、これは彼なりのジョークだったのか。 「ほっ……。悪い冗談はやめてくださいよ、青柳さ──」 「僕は女性もイケるんだ」  あらあ、両刀使いの方でございましたのね〜……って言ってる場合じゃねぇ!  いずれにせよ、俺のピンチである事に変わりはない。   「それでどうだい、早速この後にでも……」 「ちょっ、すいません! 俺そっちの気はないんで!」  青柳さんには悪いけど、ここはもうストレートに断らせてもらおう。  童貞を捨てる前に、処女を散らすわけにはいかんのだ。 「ふふ」  両手を合わせて謝る俺に、青柳さんがニッコリと微笑む。 「君はさっき、ジムに興味があると言っていたじゃないか。今更そんな嘘は通用しないよ」 「全国のジム愛好家に謝れ! アンタは一体、ジムをどんな所だと思ってるんですか!」 「え、汗を流して男同士の絆を深める所だけど」  アンタの場合は、絆の後ろに(意味深)が付くだろうが!  ……どうやら青柳さんには、何を言っても通用しないらしい。  このままでは確実に掘られてしまう……! 「ああわかった。もしかして、興味はあるけど、最初の一歩を踏み出すのが怖いとか? とてもわかるよその気持ち」  わかられてたまるか!  っていうか、ハナからそんな気持ち持ってねーし!  くそっ……どうにかして、この危機的状況から脱する方法はないだろうか。  思考を巡らせた後、一つだけ妙案を思いつく。  表面上は賢人に見える青柳さん。しかし、その実中身はバーサーカーだ。  そしてタチの悪いことに、ジムに興味があるというだけの意味不明な根拠で、彼は俺を仲間だと思い込んでいる。  そんな人間に何を言ったところで、聞き入れて貰えるわけがない。  であれば、だ。  ここは敢えて、相手の土俵に乗っかってしまえばいい。  ……いや、本心はめっちゃ嫌だけどね? 「青柳さん……実は俺……ケツが使えないんです」  ああ……俺の人生史上ナンバーワンに入る最低なセリフを吐いてしまった。 「初めてだからって事かい? ますます興奮してきたな……!」 「初めてだとか、そういう事じゃありません」  両刀使いの上に処女厨かよ!  思わずツッコミそうになるのを必死に堪えて、 「……この間、ものすごく辛い麻婆豆腐を食べてしまって、その時の後遺症で、俺のケツは今でもズタボロになってるんです。出す事はかろうじて出来ても、入れるなんてのは、とてもとても……」
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