だから、大丈夫

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 子どもたちを叩き起こし、必要最低限のものだけを鞄に詰め込んで、私は車に飛び乗った。間に合う? どうか間に合って。ああもう、もっと近くに嫁げばよかった。  父は無口な人だった。無口で、愛想もないけど、私は、それはそれは大事に育てられた。いつだって父は私の味方だった。週末はいつも、私を車に乗せて、いろんなところに連れていってくれたね。私がねだって飼った犬も、お父さんが一番かわいがってくれたね。私に子どもが生まれた時は、本当に本当に嬉しそうだった。その娘も、来年はもう中学生になるよ。制服姿、見たいでしょ?  突然こんなことになるなんて、信じられないよ。もっと親孝行しておけばよかった。一緒にいろんなところに旅行したり、美味しいもの食べさせてあげたかった。こんな娘でごめんなさい。お父さんから、いっぱい愛情もらってきたのにね。私はちっとも返してないね。  おおっといかん、鼻水が垂れてきてしまった。まだ泣いちゃいかん。  サスペンションがボロくてやたら妙な乗り心地の車を飛ばして1時間、父のいる病院へと到着した。もうすぐ8時。待合室は既にたくさんの外来患者さんで混みあっている。  そうした患者さんの間を縫うように、娘と息子の手を引き、競歩の如き足取りでエレベーターへと向かう。階段があればいいのに。なんで病院てエレベーターオンリーのところが多いんだろう。  ICUのあるフロアに降りて、ぐるりと1周、迷子になりながらも、どうにか無事に母と合流した。  母は泣いていた。  その姿を見た娘も、泣き始めた。  私はまた鼻水を垂らした。私が泣く訳にはいかない。
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