だから、大丈夫

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だから、大丈夫

 なんとも嫌な夢を見た。  父が、亡くなった祖母を乗せて車を運転している夢。  二人とも無表情で、会話もしておらず、ただただ前を向いて、車はすべるように走っていく。  私はというと、助手席に座る祖母の左横にいて、車の底から伸びる1本の細い棒を握り、舟の舵よろしく車の進行方向を導いていた。本来ならば、人の入るスペースなどない、車のドアとシートの隙間。夢の中の私は、もしかしたら霊体のようなものだったのかもしれない。  ともかく、亡くなった祖母、車、無言という不気味なシチュエーションに、ひどく寝覚めが悪かった。  数日前、父が肺炎で入院したと母から連絡を受けたから、きっとそのせいで変な夢を見たんだな──そう自分に言い聞かせながら、枕元に置いたスマホを見て、私の心臓は跳ね上がった。  母からメールが届いていた。 『お父さんの状態が悪くなって、ICUに入りました』  え。  嘘でしょ。  メールの受信時刻は、5時30分。現在、6時ちょうど。  今日も仕事だ。どうする?  実家までは、車で1時間。万が一のことが起きても、飛ばせば間に合う、たぶん。でも、仕事で私が抜けると、みんなに迷惑をかけてしまう。  どうする。  状態が悪くなって、ICU。  最近、実家に帰ったのって、いつだっけ。  ああ、そうだ、お正月に、日帰りで帰ったんだった。その時、父とどんな会話をしたっけ。  いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。行く? 行かない?  ……行かなくて万一間に合わなかったら自分が後悔する!  私は慌てて上司に休みの連絡を入れた。
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