卒業式前

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 実際、舞台の上の方が楽ではあった。  わたしにとっては大江先輩も三枝先輩も眩しすぎる存在で、声をかけるのすら何だか気後れしてしまう。ましてや、自分の気持ちを伝えることなんて出来るわけがない。  でも、舞台の上なら。  わたしと違う人物を演じている時なら、わたしは先輩に話しかけることも出来るし、触れることも出来るし、時には抱きしめることだって出来てしまう。  先輩、先輩。  わたし、あなたが好きです。  心の中で語りかける。  でも、どれだけシミュレーションしても、先輩の答えは決まっているのだ。  ──ごめんね。森口さんの想いには、答えられない。  それだけ、大江先輩と三枝先輩の結びつきは強かった。二人が離れることも、誰かがその間に入ることも、わたしには考えられなかった。口惜しいけれど。
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