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卒業式前
「待たせちゃったかな?」
先にテーブルについてミルクティーを飲んでいたわたしに、コーヒーの乗ったトレーを手にした大江先輩はそう言った。
「いえ、わたしもさっき来たところです」
わざわざ学校からも自宅からも離れたこのカフェに足を運ばせているのだ、多少遅くなっても仕方ない。
そもそも大江先輩は現在高校三年生、そして今は2月下旬。受験は終わり、後は卒業式を残すのみではあるけど、大学入学に伴って一人暮らしを始めるということで、準備に忙しいらしい。
「でも珍しいよね、森口さんが俺を呼び出すなんて。しかもこんな離れた店に」
大江先輩はわたしの正面に座り、わたしの眼を見た。
「……内密の話?」
本当にこの人は綺麗な顔をしてるな、と改めて思う。それはもう、憎たらしいくらいに。
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