豊の為に

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皆川の家に行った蘭子は 「先生、お久しぶりです、その節は、暖かい、お心使いを頂き 本当に有難う御座いました」と、挨拶をした。 「やぁ、元気になった様だね、本当に良かった」皆川は、笑顔で迎えた 「先生のお陰です、深く感謝しております」そう言う蘭子を 皆川は、じっと見て「それにしても、熟れたね~」と、言った。 「は?」何の事か分らなかった。 「君だよ、すっかり熟しちゃって、良い人が出来たみたいだね」 「えっ」蘭子は、頬を染めた。 「先生には、何も隠せませんね~」 「ははは、ほら、これを見て、熟す前の君だよ」 皆川が見せたのは、あの花魁姿の蘭子の絵だった。 「あっ」「ふふ、この花魁が君だと、私には、すぐ分かったよ 艶やかで良いね~」皆川は、目を細めてそう言った。 「先生、その花魁なんですが、先生に、お願いしたい事が有るんです」 蘭子の頼みに「う~ん、絵は良いけど、人前で喋るのは苦手だな~」 「先生、喋る程では有りません、ほんの一言で良いんです」 「君の頼みだ、断れないけど、絵は、蘭の花じゃ無くて 君を書きたいな~なにも身体にまとわない 今、まさに満開の蘭、そのままの君をね」「裸婦像ですか?」「うん」 「分かりました、やります」「いつ来れる?」「今すぐに」 「ははは、だから君は、大好きなんだ」 皆川は、蘭子をアトリエに連れて行った。 一糸まとわぬ姿で、皆川の前に立つ、皆川は、じっと見ていたが 「ちょっと、足りないな~」と、言った。 「足りないって、何がですか?」「喜びだよ」「喜び?」 「君、この頃、抱いて貰って無いんでしょ、満開の喜びに満ちた 君を書きたいんだ、抱いて貰って来てよ」 「えっ、それは無理です、遠い所に居る人ですし、訳が有って まだ逢えないんです」そうだ、逢いたい人には、まだ逢えない この事が、全て片付くまでは。 「仕方ないな、じゃ、私がちょっと触っても良いかい? 触るだけだから、君の良い人も、許してくれるよね」蘭子は、躊躇した あの時の、皆川の絶妙な指使いを思い出したからだ。 しかし、皆川の助けは、絶対必要だった、他の人には頼めない。 観念し「先生、本当に、ちょっとだけですよ」蘭子は、念を押した。 皆川は、直ぐカーテンを閉め、座っていたソファーに蘭子を寝せた。 ほんの少し、皆川の指が触れただけで、長い間満たされていない 蘭子の身体の奥は疼いた。 出て來る声を、懸命に押さえているのに 少しずつ登って来る指と共に、声が漏れる。 「先生、早く」待ちきれなくて、催促する。 「まだだよ」皆川の指は、意地悪く、なかなか来て欲しい所に 来てくれない「先生、お願い」そう訴える蘭子に 「なんて可愛いんだろう」その声と、顔を楽しむ。 「先生、お願い、もう来て」身悶えして、涙声になってしまう。 「よしよし、ここかい」ついっと、胸の先端を吸う。 「あっ、ああっ」待ちかねた喜びに、花の中が、ぎゅんっと反応し 体中に、一気に喜びの花が咲く。 「ここかな」皆川の指が、花唇に触れる「あうっ」大きな声が上がる。 ゆっくりと、皆川は蘭子を登らせる。 細く切ない声は、どんどん高くなり、ついに はしたない程、淫らな声が弾け、崩れる。 久し振りの喜びに漂う蘭子を抱きしめ、皆川は、長いキスをした。 もうこれで終わったと思っている蘭子を、皆川は、また燃えさせる。 「せ、先生、、」もう止めてと言いたいのに、身体は、その喜びに向かう 二度、三度、この上なく深い喜びの坂を登らされ「先生、もう駄目」 荒い息で、喘ぎながら、蘭子は訴えた。 「私はね、君をこんなに熟れさせた人に、嫉妬しているみたいだ 可愛い君を、虐めたくなる位にね」そう言って、皆川は、更に燃えさせる またも登りつめ「先生、本当に、もう許して」涙を溜めて やっとの声で言う蘭子に「じゃ、これで最後だよ」 そう言う皆川の指に逆らえず、またも登りつめ、果てようとした時 皆川は、花唇に当てていた指を離し、両方の胸先をつまむと同時に 花唇に口を付け、強く吸った。 蘭子の口から、鋭い喜びの声がほとばしり、花唇から頭の先へ 真っ赤な稲妻が突き抜けた、体中の力が抜ける。 もう目が開かなかった、そのまま蘭子は、眠りに落ちた。
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