傭兵エドワード

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 ファーガス王国城下町は今日も多くの人で賑わっている。  その中を堂々とした足取りで歩くのは、艶やかな金髪を胸まで伸ばし、後ろで一つに結い上げた細身の若い男。しかし一口に細身といっても、その身体は洗練された筋肉で引き締まっており、決して軟弱な印象は与えさせない。その身体を包む服はよく手入れがされており上品な印象を与える反面、腰に掛けた刀剣は彼が戦場に立つ人間であるということを如実に表している。深い青色の瞳は鋭い眼光を放ち、しかし戦人とは思えないほどのきめ細やかな白い肌には傷ひとつない。  彼の名はエドワード。この国でも有名な腕の立つ傭兵であり、その美しい容姿と過去について様々な噂話が飛び交う人物でもある。  つかつかと真っ直ぐな足取りで城下町を歩いていくその背後から、彼を呼ぶ声が響いた。 「エディ!」  エドワードは足を止めて振り返る。彼を呼んだ人物は、駆け足でこちらへ向かってくる。  風を縫うように走ってくるのは、エドワードより若い……というより幼い少年だ。それなりに整った身なりをしているが、エドワードのような戦士の風格はない。 「やっと見つけました……!」 「どうかしたのか、カーシー」  カーシーと呼ばれた少年は呼吸を乱す素振りも見せず、軽やかに立ち止まる。 「イザベラ神の祠付近から、大型の魔物反応があったそうです!」  その言葉を聞いたエドワードは、きゅっと眉根を寄せる。 「確かなのか」 「はい。王国騎士団の検索士からの情報です。傭兵組合に緊急討伐依頼が下りましたが、これを相手にできるほどの組合員はおそらく……」  カーシーに期待のこもった目を向けられる。だがエドワーズは腕組みをして押し黙っていた。
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