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「あれだけの爆発を至近距離で受けてその程度の傷……計算外だ。あなたは何者だ?」
まるで敵意の欠片もないような、穏やかで落ち着いた声。だけどそれを聞いて、背筋に悪寒が走る。あの巨人に肉薄したとき、すぐ近くで感じたものと同じ気配。
「誰だ」
鋭い声と共にエドワードが振り返る。その手はしっかりと刀の柄に添えられている。
だが彼は、振り向いた先に立っていた人物を見て戦慄した。
真っ直ぐで艶のある黒髪は腰まで伸びて、風が吹くたび軽やかに波打つ。幼い少女が持つ人形のようなフリルたっぷりのワンピースを身に纏い、肌は陶器のようになめらかで白く、人間離れした雰囲気を放っている。華奢な肩、細い脚、傷ひとつない美しい身体の、16歳くらいの若い少女。
長いまつ毛に縁どられた緑青色の大きな瞳が、エドワードを射抜くように見つめる。
武器一つ持たず、それでも重苦しい威圧感を放ちながらそこに佇むその人物は。
まさか。
「大丈夫だ、そんなに警戒しないでくれ。私はあなたを傷つけるつもりはない」
細い足が一歩前に踏み出される。この森林に似つかわしくない、艶のある真っ黒なハイヒール。そこから伸びる、か弱い脚。
エドワードは刀の柄から手を放さず、少女に問いかけた。
「名を、訊ねてもいいか」
少女は動じず、冷静に頷いた。
「名乗らせてもらおう。私は、この世界の全てを知る、造られた神。16歳の少女の姿をしたアンドロイド。全知にして全能にあらず。この世界を見捨てた神々の代役。神の権能を持たない造神。」
「名を、イザベラと云う。」
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