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造神イザベラ
__造神イザベラ。
神に見捨てられた世界で神の代役を務めるアンドロイド。人類の崇拝の対象として造られた少女。
本当に、この世界に、この場所に、実在していた。
エドワーズは唇を噛み締める。何が神の力を持たない、だ。そのか弱い容姿からは想像もつかないほどの威圧感が漂っている。これが、仮にも神を名乗る者の風格か……
「すまない、先ほどから警戒させてしまっているようだ。久しぶりの戦闘だったから気が立っているんだ。申し訳ない。」
そう言いつつも、イザベラは表情一つ変えない。貼り付けられた無表情のまま淡々と告げる。
「できれば、その刀から手を離してはもらえないだろうか。あなたに敵意があるならばこちらも応戦しなくてはならなくなる。私はそのようなことは望まない。」
エドワードは動かない。鋭い眼光でイザベラを睨むままだ。
「もっとも、軽傷とはいえずいぶんと疲弊しているようだ。その身体で戦うのはそちらも不本意だろう」
「……ずいぶんと、お喋りな神様なんだな。造神イザベラ様というのは」
半ば呆れたようにため息をこぼし、柄から手を離す。イザベラはその言葉に首を傾げた。
「そうだろうか。神は無口であるなどという記述はどのデータにもなかった。それと、そのイザベラ様というのはやめてくれ。私は敬称をつけて敬われるほどの存在ではない」
「じゃあ、何て呼べばいいんだ」
「……特別私の呼び方を考える必要はない。おそらくもう会うこともないだろうから」
そう告げて、イザベラは突然踵を返して歩き出した。その突拍子のなさに、思わずエドワードは呆気にとられる。だが慌てて彼女に呼びかけた。
「おい、待ってくれ!俺はさっきの巨人について調査しているんだ。何か知っていることは無いか?」
イザベラは足を止め、首だけで振り返る。
「ついてきてくれ。それについて話をさせてもらおう。それと……」
今度はエドワードが首を傾げる。そのエドワードの身体をまじまじと見つめて、イザベラは言葉を続けた。
「いくら魔物が出ないとはいえ、その身体でこの魔力濃度の中を歩いて戻るのは危険だろう。少し休んでいくといい」
それだけ告げると、彼女は再び歩き出した。エドワードも駆け足でその後を追う。
イザベラの華奢な背中に近付きながら、この造神はもしかしたら優しい神なのかもしれない、と思い始めていた。
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