傭兵エドワード

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 城下町から近隣の町に向かうところだった馬車の荷台に乗せてもらい、エドワードは現場へと向かった。 丁度、見知った御者が馬を走らせようと準備をしているところだった。 「エドワードさんじゃないかい!もしかして、大型の魔物が出たっていうのは本当なんですかい?」  馬車代として渡された銀貨を受け取りながら、御者の男がそう尋ねた。 「あぁ、そうらしい。商人たちの間でももう話題になっているのか?」 「えぇ、ついさっきうちにも情報が入りましてね。イザベラ神の祠の近くってなると……なんだか不穏ですねぇ」  毛皮が沢山積まれた荷台に乗り込むと、馬車はすぐに動き出した。  晴れ渡った青空をぼんやりと眺め、エドワードは馬車に揺られる。  造神イザベラの祠は、城下町から少し離れた森林の中にある。だが、それはサーチ系の魔法を使える人々がその場所を検知しているだけで、実際に見た者はいないという。数々の冒険者が祠を目指して森林へ向かうが、少し森に入っただけでその魔力濃度の高さに当てられ、やむを得ず撤退する場合が殆どだ。よほどの手練れでないと近づくことすら敵わないという、それが造神イザベラの祠。  そういった話から、「造神イザベラは実在するのか?」といった議論が度々起こる。エドワードも、その件に関しては半信半疑の部分もあった。  この世界が神に見捨てられたのは確かだが、その代役として立てられた、何の力も持たないイザベラが果たして本当に存在しているのか、と。  神に見捨てられた、という点では確固たる根拠がある。エドワードが生まれる以前の話だが、極東のある国で疫病が蔓延し、その国は滅んだというし、かつては魔物など存在せず平和な世界だったというし。その手の話はどこの文献にも山ほど書かれている。  そもそも造神イザベラは何のために存在しているのかすらわからない。諸説ある、というものだ。その人の信じ方次第、とはよく言うけれど。
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