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「お待たせ致しました、こちらでございます」  目の前に出されたふたつのリングに胸が高鳴る。落とさないように注意を払って、少しだけサイズの大きい方のリングを持ち上げた。 「箱は別にご用意致します」  気を遣ってくれたのか、リングを置いたスタッフは俺たちから離れていった。ふたりだけで話せることにありがたいなと思いながらオーウェンと向かい合う。 「この世界では、恋人同士でペアのリングをはめる人が多いんだ。だから俺も、お揃いの指輪をオーウェンに贈りたくて」 「ユキ……ありがとう」  嬉しさを滲ませるオーウェンの左手をとり持ち上げる。その薬指にゆっくりと通したリングは、指の付け根で止まった。銀色の光がきらりと光る。  オーウェンのリングには「ユキ」と、俺のリングには「オーウェン」と彫ってもらっていた。 「ユキには俺が」  今度はオーウェンが俺の左手を持ち上げる。そうっと銀色が肌に触れ、ぴったりと薬指におさまる。 「なんだか誓い合った日を思い出すな」 「俺もそう思ってた」  国民の前で交互に手を取り、唇を落とした誓いの映像が頭の中で再生されていた。 「どうしよう、にやけるのが抑えられない」  俺とオーウェンの薬指に同じ指輪がはまっている。  それで何かが変わったわけでは無いが、その事実だけで勝手に口元が緩んでしまう。  俺の指先を持ったままのオーウェンは、自然な動作で、当たり前のように指に唇を寄せた。人がいるなかでの行為に焦った俺は照れながらもオーウェンの名前を呼ぶ。 「すまない、だが許してくれ」  愛しさの込められた真剣な瞳でそんなことを言われると、もうそれ以上何かを言うことはできなかった。
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