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こんな怪奇現象が一週間も続いたので、さすがにタカ兄に相談することにした。
「実はこのアパート、駅からも近いし家賃も安いのに、必ず空き部屋があるんだ。何でか分かるか?」
「何でって言われても………」
「ここには神さまが住んでいて、おかしなことが起きるって言ったろ? そういうことだ」
「確かに口で説明できることじゃないね、それ。ていうか、あの変なトカゲもクソうぜぇ猿共も破廉恥な小人少女も……みんな神さまなわけ?」
「らしいな。ここの住人はみんなそう呼んでる」
「でも、いくら何でも神さまはなくない? 神さまってもっとこう……崇められる感じじゃん。あれってどっちかっていうと妖怪とかの類だと思うけど」
「アパートが出来る前は八百万の神々を祭る神社だったから、今でも自分たちの寝床だと思ってるって説が最有力だよ」
「とばっちりも良いところだよ!! 大家さんその事実知ってんの!?」
「いや、知らないよ。あの人はお化け屋敷にしか興味がないから」
「何てこったい……」
(あぁ、せめて大家さんにも見えていれば……ん?)
「ちょっと待って。わたし、この一週間、夜中とか朝でも馬鹿みたいに叫びまくってたんだよ? それなのに、苦情一つ来てないんだけど……」
「…………」
「タカ兄?」
「それが……部屋の外には一切聞こえないんだよ。まるで、神さまがいた間の物音だけが切り取られたかのように」
(――――え?)
「聞こえてないって……嘘でしょう?」
「事実なんだよ、これが。何らかの力で遮断されているせいで、その部屋の住人以外には見えないし聞こえないんだ。誰かを部屋に招き入れても同様にな」
「…………」
今のところ、皿を割られるとか頬をつねられる程度で済んでいる。
でも、もしそれ以上のことがあったら……?
「……つまり、<神さま>として持ち上げることで、最悪の事態を回避してるってこと?」
「いや、そこまで恐ろしい存在じゃないよ」
「ん……?」
「悪戯っていっても全部がそうなわけじゃなくて、中には友好的な奴もいるんだ。一緒にテレビ見たり雑談したりすることもあるよ」
「フレンドリーな神さまだなおい!!」
(ビビったわたしが馬鹿だったわ!!)
「でもまぁ、持ち上げるはないにしても、特別なものを感じてるってのは事実だよ。<神さま>って呼ばれてるのも、その遮断する力のことを住人の一人が『神通力だ』って言ったからだし」
「そんなんで神さま扱いされてんのあいつら!?」
話を聞けば聞くほど、神さまが崇められるものだという概念がガラガラと崩れ去っていく。元から信仰とかないけどさ……。
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