泡と湯船に戯れて

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泡と湯船に戯れて

『響様とのお風呂はボクが猫だった時以来ですね』 脱衣場の傍で薄く赤みを帯びた下着を脱ぎながらナツメグはそう呟いた。 青年はその呟きに対し、『そうだな』と肯定し、自身も服を脱いでいく。 互いに産まれたままの、生命そのものが本来あるべき姿へとなって、浴室へと消えてゆく。 『えへへ、初めての時から今日まで、何度も響様にボクの裸を見られているのに、やっぱり少しだけ恥ずかしいですね』 ほんのりと顔を朱に染め、胸を隠すように腕を交差させながら照れるようにナツメグが笑う。そんな姿に青年は目を奪われた。 無理もない。目の前にいる少女は人形のように整った顔立ちをし、うなじを隠し、肩までかかる淡い白銀の絹糸のような髪、豊作の小麦畑のような黄金と、空や海を切り抜いたかのように鮮やかな蒼の瞳のオッドアイを持ち、女性らしい丸みを帯びた身体、柔らかな肢体、そして、細く華奢な腕に押されている圧倒的な起伏による一切の垂れもない豊満な胸、少女が持つ幻想的な美しさを彼らがより引き立てていた。 『響様、頭とお背中を流しますので、座って下さい』 少女の指示に従い、青年はグレーに染まったバスチェアに腰を落とす。 『お湯、掛けますね』 そう言って、ナツメグはシャワーの栓を捻り、緩やかに噴出するぬるめの湯を青年の髪に掛けてゆく。 水を吸った青年の髪に少女は自身の手に落としたシャンプーを付け、優しく肩のコリを解すように洗い始める。 『痒い所は無いですか?』 『大丈夫だ、気持ちいいぞ』 泡と髪が互いに擦れる心地よい音と指先から伝わる少女の程よい力加減、髪を洗うという洗浄行為が今の青年にとってはなによりも幸せで充実感をもたらしていく。 『流しますね』 ナツメグはそう言って手に取ったシャワーから湯を出し、泡だった髪を洗い流す。 髪を流し終えると、今度は石鹸と青いボディタオルを手に取り、泡立てる。 『じゃあ、次はお背中を流しますね』 そう言って、先程泡立てたタオルを手に取り、青年の背中へと押し当て優しく洗い始める。 『ん・・・・・、響様の背中、やっぱり大きいですね。ふふ、洗いがいがあります』 『・・・そ、そうか』 『響様?』 どこかよそよそしい青年の声音に気が付いたナツメグは少し曇った表情で青年の名を呼んだ。 それに気が付いた青年は『大丈夫だぞ』と答えたが、少女の中ではふつふつと自分の愛する人に何か不都合な事をしてしまったのかという不安が込み上げ、抑えきれなくなり青年へと尋ねる。 『響様、ボク、何かいけないことをしてしまいましたか?』 『・・・いや、その、いけないことというか、なんというか・・・・・・あ〜』 言葉を濁す青年の姿を見て、少女の不安はより大きくなり、それを代弁するかのように、髪と同じ白銀の毛で覆われた耳はしゅんと下に垂れ、いつものようにピコピコと可愛らしく動く事などなく、微動だにしなかった。 それに気が付いた青年は優しく彼女の頭を撫で、『不安させてゴメンな』と謝罪した。 『・・・その・・・な、背中を洗ってくれるのは嬉しいんだが・・・・・・当たってるんだ』 少女の頭を撫で続けながら言葉を濁した理由を青年は打ち明けた。 理由を知るや否、少女は安心した表情を浮かべ、より一層自身の豊満な双丘を押し付けるように青年に迫る。 『ちょ!ナツメグ!?』 少女の予期せぬ行動に驚いた青年は思わず声を上げる。 『何度も見て、触って、揉んで、たまに吸ってるんですから当たってるくらいなんて事ないじゃないですか。ふふ、ボクの不安を返してもらう代わりにもっともっと、くっつきますからね!』 ボディタオルを置き、背後から少女は腕を伸ばして青年に抱きつき、更に押し付ける。 数分間、その状態でいた後、再びナツメグは青年の身体を洗い始めた。 『これで後ろは洗い終わりましたね。響様、前も洗いますね』 『え!?いや、前は自分であらーー』
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