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「俺は佐藤。ぶっちゃけあの男の話なんかどうでもいい」
「気が合うわね。私もよ」
「ではこれより」コン、と固い咳の音をマイク拾った。背広の男は辺りを見回してから壇上に手をかけて続ける。
「わが社がわが社足る所以。昭和元年より続く伝統的催し」
さて、冒頭に述べたうまい話について。
こんな「絵に描いた餅を3Dプリンターで生成したような会社」が、そうそう合法的で道理的な精神の下で成り立っていると信じられる人間は果たして存在すのだろうか。道端に転がるうまい話が、禍々しい毒素をゆらゆらと醸していることに気がつくことだろう。
採用率100%でこの待遇。
そうだ。私はまだ、ことの本質を説明しちゃいない。ここまでに酔狂だと思われてほしくなかったのだ。
「俺が今勤しんでいること」佐藤は言う。「簡単にぶっ飛ばせそうな相手を選んでいる最中だ。君みたいな奇麗な顔の子が犠牲者一人目になるだなんてバラ色の社会人生活が待っていそうだ」
「気が合うわね。私もよ」
壇上の男は声を張る。
――バトル・ロワイアルを執り行いたいと思います。勝ち残った者のみが、明日からの出社を許されるのです。
入社2日目を迎えられるのは内の0.01%なのである。
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