本編

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「改めて言うがB3コーポレーション3つのBとはBlack(黒)・Blood(血)・Barrett(弾丸)のことさ。君も明日からこの社訓を胸に働いてくれ。今日からは君の呼び名は「君」じゃあない。エージェント、殺害のライセンスを得たエージェントだ」 「光栄だよ。″光″って文字はこれ以上にないくらい似合わないけどね」  礼儀としての愛想笑いだが、男の乾いた声がホールに響く。これだけの観衆がいて拍手の一つも上がらないのは悲しいものだ。上がっては困るのだが。そもそも見えてはいないか。 「ではエージェント。何か抱負はあるかね」視界の6割を占めた男は、記号π字のひげ先端を撫でながら興味が薄そうに言った。 「ああ。一つだけあるぜ。この会社に入る前から考えていた、とっておきのセリフが」 「それは殊勝なことだ。言ってみたまえ」  私はショットガンの銃口を男の額に向けた。 「――姉の仇討ちだ! くたばりやがれ!」  人差し指に力を込め、引き金を絞った。眼前は、ゴン、と鉛の弾が花開き、カタルシスを押し込めた光がまたたいた。
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