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「あ、それから…セアラさんの手紙に書いてあったんですけど、どうやら青い満月の夜以外でも少しなら入れ代われるみたいなんです」
「えっ、どういう事!?」
「確証はないんですが、僕がレオン君の強力な魔力を持った事によって可能になったみたいです。ただ、魔力の消費が激しい恐れがあるから困った時のみ使うようにって…」
実は、僕自身はFATE(フェイト)の実験によって魔力を宿してはいた。
でも、内側に隠れたセアラさんの力が常に漏れ出している左手の影響で魔力が相殺されてしまい、魔法が使えなかった。
今回レオン君の魔力が加わった事によって、セアラさんの力とのバランスが取れたため、僕は魔法が使えるようになったみたい。
「確かにセアラさんの力は未知の部分が多いし、短時間でも相当な魔力を使いそうね…。セアラさんの言う通り、クロノ君も無茶しちゃダメよ?」
レナさんは、僕の顔を覗き込みながら頭を優しく撫でた。
僕はまたちょっぴり恥ずかしそうにモジモジしながら「は、はい…!」と返事をする。
何だか撫でられるのが恥ずかしい事を分かっててやってるんじゃないかと思ってしまう。
そんなこんなで朝食の支度を終えたのが6時半頃。
次にココさんが起きてきて、3人は朝食を食べ始めた。
「もしかしてミーちゃんって朝弱いんですか?」
1人起きてこないミーナちゃんを心配する。
「実はそうなの。起こさないといつまでも寝てるんだよねー…」
ココさんは、パンを口に運びながら苦笑いした。
あんなに元気いっぱいなのに何だか意外だな。
僕も釣られてクスクスと微笑んだ。
朝食を食べ終え、身支度を済ませると、僕は左腕に包帯を巻き始めた。
勿論これは、白い体毛に包まれている左腕を隠すための物。
包帯を巻き終えると僕はレナさんに話しかけた。
「レナさん、僕ちょっと出かけてきます!」
「あら、どこへ行くの?」
「レオン君のお墓へ行ってきます!」
「分かったわ。お城はレオン君のお墓からの方が近いし、後で迎えに行くわね」
僕は「はい!」と返事をすると家を出て行った。
時刻は朝の8時頃。
外は、陽の光が優しく差していた。
隠れながら歩いた昨日とは違い、町の大通りを歩いていく。
「昨日、あんな事があったなんて嘘みたい…」
昨日、FATE(フェイト)の襲撃にあった町だが、お店はさほど影響はなかったようで、開店準備をしているお店が多かった。
でも、寧ろそれを狙っているズル賢い者もいた。
突然辺りに響いた女性の悲鳴…。
僕は、悲鳴が聞こえた方角へ走り出す。
すると、そこには道に座り込む女性と何かを手に持ち、こちらに向かって走ってくる男性が目に入った。
引ったくり…!?
何とかしなくちゃ。
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