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第3話 青い満月の夜に
僕は、レナさんに自分の事を何も包み隠さずに話した。
実験中に起こった事故によってパラレルワールドから飛ばされてきた事。
何年もの間、FATE(フェイト)によって実験体にされてきた事。
自分の正体が別世界の『レオン』である事。
そして、墓石から現れたレオン君から魔力を授かった事…。
正直、話すのは辛かった。
でも、僕に関わってしまった以上は話さなくちゃいけない。
ミーナさんやココさんだって怖い思いをしたんだから…。
「それじゃ、あなたは別の世界のレオン君なの…?でも、あなたの体は…」
ミーナさんは、驚きながら思わず身を乗り出した。
話を聞けば、レオン君とミーナさんは同い年の12歳。
でも、僕の姿はレオン君が亡くなった当時より少し成長した程度の姿だった。
僕は、目を閉じて深呼吸をする。
本当はこれを話すのが1番辛いんだけど…。
でも、話さなくちゃ…。
「時空転移実験の影響です。時空転移装置は『時空トンネル』と呼ばれていて並行世界の実験以外にも時間移動の実験も行われていたんです」
「ま、まさか…実験の影響で体の成長に…?」
3人とも凄く驚いてる…。
こんな実験なんて他ではやってないだろうし、無理もないんだけど…。
「目を覚ました時、僕は町から離れた森の中に倒れていました。恐らく、実験施設があった場所がこの世界だと何もない森の中なんだと思います。見たことがある景色だったので何とかこの町に辿り着いた所まではよかったんですが…。自分のお墓がある事を偶然知りまして…」
僕が、この世界に飛ばされて来た時、一緒に爆発の衝撃もこの世界へと伝わっていた。
それが町で噂になっていた地震の正体。
そして、その地震の原因の一つとして、『レオンのお墓から魔力が漏れ出している』なんて奇妙な噂が流れていた。
偶然そんな噂を聞いた僕は、信じられないながらもパラレルワールドへ飛ばされた可能性も頭に入れながら情報を集めてまわった。
実際に自分のお墓を見て、確信に変わった時は言葉が出なかった訳なんだけど…。
「それにしても、こっちのレオン君は凄い魔力を持っていたみたいですね。僕なんかとは大違いだ…」
僕は、苦笑いしながら紅茶を飲んだ。
そう、実は僕…。レオン君の魔力を授かるまでは魔法なんて全く使えない子供だったんだ。
でも丘で出会ったお爺さんや町の人から聞いた話では、レオン君は強力な魔力を生まれつき持っていたみたい。
僕とレオン君は住む世界が違うけど、同一人物のはずなのに不思議だよね。
これがパラレルワールドって事なのかな。
「パラレルワールドが本当に存在するなんて…。何だか夢を見ているみたい」
ココさんは「うーん」と腕を組みながら言った。
無理もないよね…。
正直、僕だってまだ信じられないし…。
「色々話してくれてありがとう。次は私たちからお話するね」
そう言うと今度はレナさんが僕に話を始めた。
レナさん達は、表向きにはカフェとちょっとした宿屋を経営しているんだけど、裏ではFATE(フェイト)を追っている組織『シーカー』の一員なんだって。
特に、レナさんは上官的なポジションで色々と指示を出したりしているとか。
ミーナさんは、年齢的にあまり活動はしていないみたいなんだけど…それは仕方ないよね。
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