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僕は、左腕に巻かれている包帯を解こうと右手を伸ばす。
だけど、1度は握った包帯をすぐに放した。
「いや、それは今夜…。『青い月』が出てきたらお話します。多分その方が良いと思うので…」
僕がそう言うと3人は顔を見合わせた。
『青い月』とは、その名の通り、青く光る満月の事。
この世界には、月が2つ存在していて、特定の地域では、2つの満月の月明かりが重なると青く照らされる事がある。
実は、それがシエル島特有の現象だった。
「よく分からないけど…。クロノ君がそう言うのならそうしましょうか。クロノ君には部屋も用意してあげなきゃならないし」
レナさんは、そう言うと僕が生活するための部屋を用意するために部屋を出て行った。
「じゃあ私もお母さんを手伝ってこようかな」
ココさんもそう言って立ち上がると、部屋を出て行った。
わざわざお部屋まで用意してくれるんだ…。
また後でちゃんとお礼を言わなくちゃ。
とりあえずどうしよう…?
ミーナさんと2人きりになっちゃった。
ちょっぴり気まずくて視線を下へ落とす…。
そんな中、ミーナさんが口を開いた。
「…ねぇ、クロノ君…ちょっとお願いがあるんだけど…」
「えっ…?な、何…?」
突然の事に驚く僕。
突然すぎて耳と尻尾が先までピンと立っている。
「その…尻尾…触らせてもらってもいいかな…?」
「し、尻尾…?い、いいけど…」
…捕まってる時もそうだったけど、この尻尾を触りたいって言ってくる人が結構いるんだよね。
ちょっと不思議な感覚だな…。
僕は、椅子から降りるとミーナさんの横で背中を向けて立った。
ミーナさんは、僕の尻尾に手を伸ばし、ゆっくりと撫でる。
すると、ミーナさんの顔がパァッと明るくなった。
「ふわふわでモフモフ…!」
「あはは…!喜んで貰えたならよかったよ」
僕はミーナさんとソファーに隣同士で座り直した。
ミーナさんは、僕の尻尾で自分の体を包むようにして満足そうにしている。
そんなに気持ちいいのかな、僕の尻尾…。
僕は思わず苦笑いをしながらミーナさんを見ていた。
「懐かしいなぁ…。私ね、レオン君の尻尾に包まるのとっても好きだったんだ」
ミーナさんの口から出てきたレオン君のお話。
それを聞い僕はハッとした。
「ねぇミーナさん、僕もお願いがあるんだけど…」
「同い年なんだから『さん』付けなんてやめてよ〜。みんな『ミーちゃん』って呼んでくれてるからクロノ君もそう呼んでよ!」
ミーナさんは、ニコッと微笑みながら僕の顔を覗き込んだ。
一方の僕はちょっぴりタジタジ…。
じゃあ、そうさせて貰おうかな。
同い年の子を名前で呼ぶのも…何だか久しぶりだな。
「で、お願いって何?」
照れてる僕にミーナちゃんは、逆に聞き返してしまった。
流石にこれには僕も「あっごめん!」と謝った。
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