第3話 青い満月の夜に

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「実は、僕の左腕と心臓は…他の子から移植された物なんです」 僕は、7年前の人体実験の際に大怪我を負い、瀕死の状態になっていた。 その時、別の実験で同じく瀕死になっていた女の子の心臓と左腕を移植され、一命を取り留めたんだ。 でも、その代わりに移植元の女の子は命を失ってしまった。 「僕は元々、魔力も不思議な力も持っていませんでした。でも、左腕と心臓を移植してから魔力を打ち消す力が使えるようになったんです。そして…」 僕はカーテンを掴むとゆっくりと開き、頭のバンダナを取った。 窓からは青白い光が差し込み、体を照らす…。 「よく…見ていて下さい」 僕は、目を閉じて月の光を全身に浴びる。 実際これを人に見せるのは初めてだ。 …ちょっと緊張する。 そんな事を思っていると僕の体に変化が起こった。 僕の体が数センチ宙に浮くと、風に吹かれたように尻尾や体毛にが揺れ始める。 そして、全身の体毛が少しずつ白く変化し始めた…。 「お母さん…どうなってるの…?」 「分からない…こんなの見た事がないわ…」 僕の体の変化に戸惑う3人…。 無理もないはず。普通ならこんな事が起こる訳はないのだから…。 僕の体は全身が真っ白な体毛に変化するとゆっくりと床へ降り、目を開けた。 そして、特徴だった青と赤のオッドアイが両目とも青い瞳に変化していた。 「ク、クロノ…君?」 別人のように変わってしまった僕の姿に言葉を詰まらせるミーナちゃん。 「驚いた…ですよね?実はこの姿を他の人に見せるの初めてなんです…」 声を発すると更に驚く3人。 僕の声は高くなり、まるで女性のような声に変わっていた。 「クロノ君…これは一体…!?何が起こってるの?」 流石のレナさんも僕の変化に驚きを隠せなくなっていた。 「えっと…そのぉ…」 仕草までも女の子のように変わる僕に3人の視線が集まる。 両手で口元を隠してながら目が泳いでいる…。 うぅ…やっぱり恥ずかしい…。 早いとこ『彼女』にバトンタッチしよう。 3人の視線を浴び、プシューと煙を出しながら顔が真っ赤に染まった。 「こ、このままだと埒が明かないので…ちょっと替わりますね…」 「替わる…?」 僕の発した『替わる』という言葉に首を傾げる3人…。 僕は、再び目を閉じると「お願い、出てきて…」と呟いた。 すると、一瞬ピクッと何かに反応したかと思うとゆっくりと目を開けた。 でも、それはもう『僕』では無かった…。 「初めまして、セアラと申します」 『セアラ』と名乗った私を見て更に言葉が出なくなる3人…。 「驚くのも無理ありませんね…。実際、私も驚いてるんですから…」
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