第3話 青い満月の夜に

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私は、クロノ君が移植されたと言っていた心臓と左腕の移植元の女の子。 私もFATE(フェイト)によって捕われ、長い間実験体にされていました。 そして、クロノ君が使う『魔力を無力化する能力』は元々は私の力…。 青い満月の夜に月の光を浴びると私の力が強くなり入れ替わる事ができるようです。 「な、なるほど…クロノ君の不思議な力はあなたの能力という事なのね?」 「はい。レオン君…いや、クロノ君が相手の魔力が読めるのも私の力の一つなんです」 「でも私、魔力を無力化する能力なんて聞いたことがないよ?」 困惑しながらココさんが聞き返す。 相手の魔力を無力化する能力…。 それは、レナさん達は勿論、FATE(フェイト)すらも把握しきれていない能力だという事が町へ攻めてきた団員の反応で分かるでしょう。 「私は、普通の狐族ではありません。実は、半妖で神社の巫女をしていました。年齢的には3桁になります」 私は、元々はこの町にあった神社で巫女をしていました。 その昔、山奥に身を潜めていた狐の妖怪と町の神社で巫女をしていた狐族の女性が恋に落ちて生まれた子供が私『セアラ』で、妖怪と一般的な狐族のハーフの『半妖』として生まれた。 半妖の私は、一般人に比べると寿命も長く、成長が遅い為、人目を避ける為に次第に町から離れて生活するようになっていった。 神社も長い年月の中で町から別の場所に移動させられていて、今や神社の存在を知る者も居なくなったはずだったのですが…。どこから嗅ぎつけてきたのか、『山奥で巫女をしている半妖がいる』と突如現れたFATE(フェイト)によって捕われ、『貴重な半妖』として実験体にされたのです。 「私の能力は、妖力としての力なのでしょう。私やクロノ君の左手には魔術や妖術の類いは効果がありません。しかし、FATE(フェイト)は『半妖』として私に関心があっただけで私の能力には気がつかなかったようです。それが唯一の救いでした」 一度に話過ぎたかな。一呼吸しよう…。 私は、胸に両手を重ねると深呼吸をする。 「クロノ君は…とても優しい子です。私達は、同じ日に別の実験で共に瀕死に陥りました。協議の結果、少しでも助かる見込みのあったクロノ君へ私の体の一部が移植される事が決まり、私は見捨てられる事に…。でも、クロノ君は朦朧とする意識の中で『私の精神と人格』を受け入れてくれました。私を救ってくれたんです…」 あの時、私は死んでしまうはずだった。 でも、クロノ君が助けてくれた…私を受け入れてくれた…。 こんなにも小さな男の子が…。 想像以上のFATE(フェイト)の悪行…そして、クロノの優しさ…。 レナさんは、思わず私を優しくギュッと抱きしめてくれた。 突然の事に最初は戸惑ったけれど…すごく嬉しかった。 私もレナさんの体にギュッと抱きつき返し、「ありがとうございます…」と一筋の涙を流した…。 そんな様子をココさんとミーナちゃんは静かに見つめていた。
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