第3話 青い満月の夜に

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「あ、もうこんな時間」と私は、ソファーから降りると紙とペンを用意した。 「セアラさん、どうしたの?」 ココさんは、何やら紙に書き始めた私に質問する。 でも、書き始めの部分で何を書こうとしているのかは何となく分かったみたい。 「『クロノ君へ』…?」 「えぇ、私が出てきている間、クロノ君は眠っている状態なんです。なので、こうやって手紙を書いておこうと思いまして」 「じゃあ、クロノ君が出てきている時はセアラさんも眠ってるの?」 ミーナちゃんの質問に私は「いいえ」と首を横に振った。 「クロノ君が出てきている時でも私は起きています。なので、会話やクロノ君が見ている物もちゃんと分かります。一応、クロノ君とお話する事も出来るんですが、クロノ君の体に負担がかかってしまうので、あまりやらないようにしています」 そう言いながらスラスラとペンを走らせて手紙を書き終え、机の上に置いた。 「遅くなっちゃいましたし、今日はお開きにしましょう!久しぶりに沢山お話し出来て楽しかったです」 私は、ニコッと微笑むと頭を下げた。 「ううん、私も楽しかった!」 「そうだね、青い満月の夜しか会えないのが残念だけど…。またお話聞かせてね!」 ミーナちゃんとココさんもニコッと微笑んだ。 こうやって他人とお話したのはいつ振りなんだろう…。 長い事一人で山の中にいて、それからはFATE(フェイト)に捕まって…。 ココさんとミーナちゃんは、それぞれ自分の部屋に戻っていった。 私は、ベッドに座ると窓の外を見た。 外は変わらず、青白い月明かりで照らされている。 「(この世界の私は…生きているんでしょうか…?)」 夜空に輝く二つの満月を見ながらふとそんな事を思った。 そして、その頃1人でリビングに居たレナさんも同じような事を考えていた。 「この世界のレオン君が亡くなった時期とセアラさんの体が移植された時期が同じ…。もしかして、世界の分岐点はそこなのかしら…?」 クロノ君とセアラさんの話をノートにまとめながら悩む。 「いや、結論を出すにはまだ早い…かな。そこが分岐点だとしても移植手術がされなかった理由が分からない…」 今の情報だけでは、これ以上考えても仕方がない。 ノートを閉じると、リビングの電気を消して廊下に出る。 「(今は、クロノ君とセアラさんを見守ってあげる事…。それが私の役目ね)」 私は、自室へ入るとノートを置き、電気を消してベッドに座った。 部屋には月明かりが差し込んでいた。 月明かりはとても綺麗だけど、カーテンをしっかりと閉めるとベッドに寝転んだ。 クロノ君の中に隠れていた『セアラ』さん クロノ君と共に迷い込んだもう一つの世界で、彼女の運命も少しずつ動き出そうとしていた…。
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